本書は歌人与謝野晶子が、どうやって幅広いテーマで社会評論を書き始め、論考や思想を深めていったかをさまざまな角度から考察したものです、著者は朝日新聞・毎日新聞記者を経てフリーランス、歌人
新聞と晶子
新聞を読む女ー晶子、大阪の新聞事情ー大阪朝日と大阪毎日、紙上で出産を詠うー東京日日、難産を乗り越えてー出産の歌、出産を詠い論じるー文学テーマ、忘れがたい痛みー初産、
表現の自由を求めて
君死にたまうことなかれー明星と統制、「灰色の日」の憤りー新声、発禁処分と抑圧ー明星、名指しの大臣批判ー東京毎日、「長者」は大倉喜八郎「宰相」は桂太郎、「悲しいこと」ー発禁処分に対する批判、「春泥集」の思惑ー歌集に入れなかった歌、文芸委員会のその後ー廃止、
社会事象を追う
コメンテイター晶子ー灰色の日連作、「時の人」金次郎を喜ばす浪花節と活動写真、政府の勤倹奨励、教訓話の白々しさ、潜水艦事故を詠むー佐久間大尉を傷む歌、時事詠の行方ー木村徳田二中尉を悼みて・東京朝日
嵐の時代に
「あかき旗」の事件ー神田錦輝館集会で検挙、判決への抗議ー灰色の日、赤旗事件の余波ー灰色の日三首、事件の深い傷跡ー社会主義者の活動先鋭化、恐怖の時代にー大逆事件、鴎外の抗議ー「沈黙の搭」「危険なる洋書」「食堂」、晶子と寛の不安ー検閲と発売禁止「女学世界」、巧者な政府批判ー「太陽」、大逆事件と出産ー東京日日、寛は大逆事件で誠之助の死を悼む、戯曲「柩」に託した思いー大逆事件、
憧れのパリへ
言論の世界でー評論集「一隅より」、パリを目指すー心はパリで待つ夫の姿、ロダンに会いに行くー有馬生馬に紹介状依頼、巨匠を詠う「文章世界」、松岡曙村との出会いで次男秀の外交官に、「最上の職業」とはールタンの取材で「新聞記者」・記者ファローとの交流から・取材場所はパリの画家「江内」のアトリエ、ジャーナリストの自覚ー評論集「雑記帳」、
女性記者へのまなざし
草創期の婦人記者ー竹越竹代「国民新聞」、「婦人記者花くらべ」ー「婦人世界」、記者を目指した理由ー就職口の少なさ、訪問記者の来訪ー晶子の面会お断り、記者と晶子の攻防戦、晶子は「太陽」で「婦人記者俱楽部」、共感と励まし、当時の「新聞記者」-将来は一葉・晶子のように、
大正デモクラシーの中で
「雑記帳」の自信ー「エトワアルの広場」、英国の女性参政権運動に共感、夫寛の選挙応援の是非について、女性に参政権をと答える、女性運動の盛り上がりー「新婦人協会」設立、民主主義の根幹ー「平等の権利を主張する思想」、生活者のまなざしー公設市場、文化主義への共鳴
労働の本質
「母性保護」を巡ってー男女等しく働き社会を支える仕組み、母性礼賛への疑問ー母性偏重を排す、主婦に憧れる女性たち「良妻賢母」、経済的自立を巡ってー「女子の職業的独立を原則とせよ」、国家観の違いー育児は国家の仕事、「母性保護」を巡ってー育児休暇、働きすぎの男たちへー「人生は男女の協同から成り立つ」、「保護」とは「隷属的生き方」、家事の省力化、働くことの尊さ、労働とは何かー「力作」、「労働は商品でない」、
学び続ける人生
「あぢきなきわが生立」ー女である不平等、明治の教育制度ー高等女学校、女子教育を斬るー家事・数学・外国語、女子学生への期待ー東北帝国大学門戸を開く、「恩師は紫式部」ー平安期の貴族社会が高等教育機関、学校への具体的提言ー感染予防、外国語と国語ー外国語を過度に尊重」「外国盲従」、理想の学校をつくるー文化学院、読書による学び、生涯を通して学ぶ、
カルピスと百選会
新発売の乳酸菌飲料ー三島の与謝野夫妻にカルピス試飲依頼「奇しき力」、白粉の広告をめぐってー桃谷順天堂の下田歌子起用、魅惑の懸賞広告ー三島海雲、高島屋「百選会」に参画、「平和色」にこめた思いー評論集「心頭雑草」、百選会を詠むー463首、美しき着物への憧れー「私の生い立ち」、カラフルな童話世界ー童話集「八つの夜」着物の描写、「秋も琥珀茶」ー「光る秋」、百選会の仕掛人ー川勝堅一宣伝部長、ファッションへのまなざしー「女子の洋装」、
メディアの世界に生きて
寄稿家になるー読売新聞、多読のすすめー「私の新聞観」、取材される側の痛みー報道に対する抗議「明星」、著作権の問題ー加藤紅葉「恋に生きたる須磨子の一生」に無断引用、報道は歴史の一部ー松井須磨子を客観的に批評と同情、外国電報への信頼ー海外ニュースを重視、新聞は「社会大学」ー新聞に対する信頼と期待、読者の信頼ともに、小さな楽器を奏でたいー源氏物語の現代語訳と「日本古典全集」の編纂・校訂=ライフワーク
まとめ
晶子がパリ取材されたとき「最上の職業は新聞記者」と答えたことから、疑問を持ち、ジャーナリスト与謝野晶子をスタートさせた、全体像に迫れています、