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ローマと江戸

本村陵二 テルマエと浮世風呂を読む

皆さん銭湯いってますか。本書は東京大学本村名誉教授がテルマエと浮世風呂について比較研究したものです。

大都市の見世物

花見の起源は奈良時代、庶民に開放したのが徳川吉宗、花見スポットを用意した、江戸は停滞期に入り、ガス抜きが必要だった、隅田川の花火もガス抜き。古代ローマ人の関心事は、皇帝がばらまく「パンとサーカス」、熱狂したのが戦車競走や剣闘士の試合、頻繁に行われたのが剣闘士興行、コロッセオ建設。江戸時代歌舞伎は娯楽の王様、寄席は手軽な娯楽。ローマ皇帝は「パンとサーカス」を盛大に行い、祝日を増やした、

水の享楽

江戸の人は湯屋通い、湯屋の2階に茶菓子や囲碁・将棋が楽しめるスペースができた。ローマ人はこぞってテルマエ(公衆浴場)に通った、社交場であって大いに楽しんだ、テルマエは水資源から生まれた、ローマは飲料水や生活用水の為上水道整備、供給していた、江戸の上水道は「神田上水」「玉川上水」で潤していた。日本とローマの共通点は後進国で、先進文化を取り入れた点、テルマエの消滅は水資源、スタッフ不足、キリスト教にある、日本は風呂好きは湿度に影響

諧謔精神の爛熟

俳諧連歌は山崎宗鑑が座興として作られ、捨て置かれた歌を集めた「犬筑波集」が始まり。江戸期「前句付」が巷で大流行、選者柄井正道の俳号で「川柳」と呼ばれ、季語も素養も要らない川柳は裾野を広げた。狂歌は気の利いた比喩で日常を諧謔的に詠んだり、名作のパロディを展開、パロディで代表的なのは大田南畝の持統天皇。ローマは「サトゥラ」諷刺詩、ホラティウスは人間の有様と愚かさを暴き、戒める詩を書いた、ユウェナリスは愚業や悪徳を徹底的に糾弾、世直しの劇薬である、悲劇は人気ない。文芸の隆盛は、江戸では歌会の伝統と出版ビジネスが結びついたが、ローマでは集まって競い合うことはしない、

読み書きの愉しみ

読み書きは「書記」の専門スキルであったが、ローマでは一般庶民に広がり、帝国衰退で読み書き能力低下。江戸の人口100万人を超え、庶民は読み書きができ、好奇心旺盛となった。人々が読み書き能力を鍛えたのは立身出世とエンターテインメントを楽しむのが理由、ローマの識字率の高さはポンペイの落書きに手掛かりがある、江戸の識字率の高さは漢字にルビがついていること、歌川国芳「仮名手本忠臣蔵」。江戸は寺子屋、ローマは青空学級で学ぶ、江戸に貸本屋あり、ローマに図書館・すべて市民に開放。日々の情報はローマでは最古の新聞「アクア・ディウルナ」、江戸では瓦版

平和が生んだ美酒

ワイン造りはエジプトからローマに伝えられ、ガリア遠征で樽を見つける、ワインがより美味しくなった、江戸時代は清酒が造られるようになり、酒専用「樽廻船」の運用で安定供給ができた、ローマ人は、上流階級は互いの邸宅で宴席で酒を楽しんだ、庶民はテルマエで嗜んだ、「テルモポリウム」という居酒屋もあった、江戸でも金持ちは料亭や遊郭で飲み、庶民は長屋で酒肴を持ち寄って飲んだ、「角打ち」や料理茶屋もふえてきた、

美徳と武勇の教訓

新渡戸稲造「武士道」は礼節をわきまえ、惻隠の情を失わず,私信を捨てよ。ヨーロッパでは騎士、キケロは「父祖の威風」こそが優れた人をつくると確信。新渡戸は、日本人とローマ人の似ている点は内省するためヴェールをかぶって祈る点と仇敵の死に敬意にある

泰平の夜遊び

吉原は日本橋人形町に開設後浅草浅草寺に移転、遊女の最高位は「太夫」、遊ぶためには「遣手」老女の挨拶受け、上座を空けて太夫を待つ、3度目に馴染の客と認められる、ローマでは吉原のような記録痕跡がない、吉原は、気楽さの「飯盛女」「湯女」に押され、寛政の改革で凋落、

権威に通じる道

ローマの街道は、攻撃目的の直線舗装道路、江戸期の街道は、平和時の「専守防衛道路」、参勤交代は①日本は一つになった②庶民の暮らしを向上させた③武士ネットワークを形成、ローマは権力と権威を結び付け、日本は権力は幕府、権威は天皇に分けた、

耐えられる腐臭

日本でも平安時代は、おまるを使っていたが、庶民は外で用を足していた、14世紀汲み取り式登場、徳川幕府は、武家屋敷や長屋の共同トイレにたまった糞尿は、近郊農家が専用の桶を持参して回収、有機肥料として活用していた。ローマは144ヶ所の公衆トイレがあり、上下水道整備されていた、公衆トイレが発達したのはトイレがない家があり、集合住宅では共同トイレで汚物は下水に流された、トイレ皇帝ウエスパシアヌスは公衆トイレを作り、人気のコロッセオを建設した

粋な生き様

江戸時代に興隆した俳諧は、四季折々の風物に遊び、自然の景を愛で、自然の営みに人生を重ねて憂いや悲しみもさらりと読んだ、与謝蕪村「春泥句集」代表句「春の海ひねもすのたりのたり哉」、ペトロニウス「サテュリコン」徹底した遊び心と教養の深さに溢れる、松尾芭蕉「幻住庵記」仕官に心揺れ、突き放す、セネカ「生の短さについて」暇な時間の用い方、皇帝ハドリアヌスの公衆浴場に足運び治世の半分を旅行

まとめ

ローマと江戸を比較研究、ガス抜きとして見世物、テルマエと浮世風呂、川柳・狂歌と風刺、貸本屋と図書館、ワインと清酒、武士道と騎士道精神、吉原、アッピア街道と東海道、下水道,哲人と俳人と対になるもので探った都市比較です