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絵画

日本美術の核心 矢野新 書評

本書は日本美術の核心は西欧とは違い、周辺文化・歴史性にあることを検証したものです、著者は東京大学院博士課程中途退学、跡見学園女子大学教授、近世の宗教美術を開拓、

入ってきたもの・出て行ったもの

原始の造形ー縄文文化、入ってきたファインアートー仏教美術、リアリズムという価値観⁻水墨画や肖像画、西欧画法の消化ー南蛮文化、入ってきた素朴な造形ー茶碗、南宋画の流入、近代に流入した素朴ー朝鮮工芸、出て行ったものー扇や屏風、浮世絵からファインアートへ、公的な日本美術史編纂「稿本日本帝国美術略史」

デザインへの傾斜

非対称-桂離宮、幾何学的構成ー源氏物語絵巻・雪舟・北斎、単純化・単一モティーフー尾形光琳「燕子花図屏風」、余白、あるいは無背景ー菱川師宣「見返り美人」、黒地と金地の背景ー東博蔵「孔雀明王」、描かないことの意図ー宗達「仔犬図」、トリミングー光琳「紅白梅図屏風」、遠近法と構図の妙ー浮世絵版画、異種の取合せー「春日山蒔絵硯箱」、

そこにあるのは「美」か「真理」か

美しさの優先とイメージの合成ー源氏物語絵巻、建築物に描き方ーやまと絵、見えないものを描く―鳥獣戯画、短縮法を回避ー普賢菩薩像、突き出る「手」をどう描くー北魏の「竜門石窟賓陽洞本尊」

教養があってこそ味わえる

王朝文学を描くー源氏物語絵巻、和歌と美術ー本阿弥光悦「船橋蒔絵硯箱」、江戸町民が愛した錦絵、俳画のオリジナリティー与謝蕪村「紫陽花にほととぎす図」

文学と絵の幸福なコラボレーション

文字を書き連ねて描くー加藤信清「五百羅漢図」、絵の中に文字を組み込むー藤原伊之「葦手絵和漢朗詠抄」、文字を絵画的手法で飾るー歌川国芳、絵を文字のように読むー判じ物、アイディアあふれる絵暦ー南部絵暦、

素朴を愛する

やまと絵の素朴ー八幡縁起絵巻、教養人が描いた素朴絵ーうらしま絵巻とおようのあま、16世紀の多様なスタイルー参詣曼荼羅、商品としての素朴絵ー奈良絵本・丹録本・風俗絵巻・大津絵、教養ある絵師の素朴絵ー光琳「布袋図」よ乾山の「十二か月花鳥画」、禅僧が描いた素朴絵ー白隠、南画の素朴ー大雅の「東山清音帖」、近代の素朴絵ー萬鉄五郎と岸田劉生、創作版画と文豪の素朴絵ー棟方志功と武者小路実篤、西欧発の素朴ーアンリ・ルソー

わびの革命

わび茶の革命ー唐物と茶の湯、利休の挑戦ー楽長次郎の茶碗と待庵、柳宗悦の民藝、青山二郎は近代骨董を打ち立てる

庶民ファーストなアート

造仏聖の木彫ー円空「千面菩薩」、職人による庶民のための宗教美術ー歌川芳藤「有卦絵の福助」、地獄絵と石仏、現在進行中の近世宗教美術の発見ー須藤弘敏の陸奥の民間仏の発見、若い女性というマーケットー竹下夢二

多様なスタイルの競演

アニミズムと仏教の融合ー熊野速玉神社の男女の神像、疱瘡絵・麻疹絵・鯰絵、文化の保存庫ー仏教と茶の湯、18世紀江戸絵画の多様性ー百花繚乱、外からの刺激ー中国文化と蘭学、江戸時代のファインアートー日光東照宮と狩野探幽の障壁画、食から見る和の本質⁻庶民的な雑食性

周辺のオリジナリティ

ロシアの場合ー中央文明として振舞う、イギリスの場合ー庭園文化、朝鮮半島の場合ー常に中国のファインアートを意識、国内における周辺文化ー鎌倉、東国のオリジナリティー天台寺の木彫群、琉球の造形ー中国と薩摩の周辺

まとめ

日本美術のオリジナリティはファインアートをはみ出す庶民性にある、素朴を愛する、わびの精神、庶民ファーストなアートにあると検証したものです、ファインアートの中国から周辺アートが誕生したことは素晴らしい、