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ワイン法 蛯原健介 書評

ワイン法はなぜ生まれ、何を守るのか、ヨーロッパにとってのワイン、ワイン造りに法の介入、定義、産地表示、セパ―ジュかテロワールか、ワイン法に学ぶことはたくさんあります著者は立命館大学院博士課程修了、明治学院大学教授、専攻は公法学・ワイン法

「本物」を守る戦い

1フランス革命とワインの自由化、アンシャンレジーム下の流通規ーパリ近郊で生産されたワインは市内販売禁止、旧来の生産者を保護する栽培規制、革命前夜に見られた自由化の契機、入市税への不満、ワイン消費者の怒りと大革命、自由放任主義でガメ種栽培、

2黄金時代の到来、害虫や病気との戦いを制し、1875の大豊作と南仏の躍進、1855年の格付けー「ボルドーワイン」、1860年の英仏通商条約で自由貿易、黄金時代を支えた低温殺菌法、忍び寄る影ー質より量

3「本物のワイン」を守る戦い、フィロキセラ害虫禍とワイン不足、真の厄難ー輸入ワインと模造品の横行、真のワインを定義するー1889年のグリフ法、フィロキセラとベト病の克服、

「産地」を守る戦い

1不正ワインとの戦い、1907年のラングドックのブドウ栽培農家の暴動、供給過剰の原因は模倣ワインで製造禁止、

2混迷する「産地」画定、横行する産地偽装、1905年法の制定ー産地偽装の禁止、政府の産地範囲画定ーカズヌーヴ法、シャンパーニュの産地画定失敗で軍隊の出動へ、迷走するボルドーの産地画定、司法によるパム=ダリア法案ー品質要件の萌芽、削除された品質概念ー無数の訴訟提起の恐れ、

3原産地呼称制度の誕生、第一次世界大戦後の市場崩壊ー顧客戻らず、最初の「原産地呼称」ー1919年法、品質要件をめぐる見解ーブルゴーニュの消極性、品質要件をめぐる見解ーボルドーの積極性、1919年法の帰結は司法の限界、1927年法による改正ー品質要件の第一歩、生産規制を免れるための原産地呼称高級ワイン、名声の前提としての品質、裁判所の態度の変化ー品質概念

4「コントロール」される原産地呼称、AOC法の制定ー1935年7月30日のデクレ=ロア(政令、原産地呼称ワイン生産量統制)、AOC制度のスタート、限定されたワインとしてのAOC、下位カテゴリーVDQSの創設と統制、大寒波と推奨品質AOCへの改植、ラングドックのAOC昇格はー農相シラクの政策・ミッテラン政権の誕生に深いかかわり、ヴァン・ド・ぺイの誕生ー日常消費ワイン、「セパージュ」志向、原産地呼称制度の多品目への拡大

生き残りをかけた欧州の戦い

1欧州統合化のワイン政策、第二次世界大戦から欧州統合、関税障壁の撤廃、残された非関税障壁、共通農業政策に組み込まれたワイン政策ー生産量抑制、ワイン政策をめぐる当初の合意①各国の伝統的慣行維持②ワインを二つのカテゴリー③ブドウ植え付け自由、フランスの主張ー、クオリティワインとテーブルワインの区別、錯綜する加盟国の利害、

2ワイン共通市場制度の発足、1970年の共通市場制度規則ー市場介入、品種の格付けと植付統制、醸造方法および流通ー補糖・徐酸・補酸、「テーブルワイン」に要求される基準、クオリティワインの特別ルール、二重政策の確立ー①テーブルワインのみ共同体の問題、クオリティワインは国内問題②フランスのワイン政策を共有、各国の原産地呼称ワイン・イタリアはDOCG・ドイツはQMPとQBA・ルクセンブルクはMoselle.LuxembougeoiseとCemant.de.Luxembourg.ポルトガルはDOC、スペインはDOC

3本格化する生産管理、増え続ける余剰ワインー市場介入と売れ残った余剰ワインを蒸留、続く供給過剰構造ー新規植付禁止とテーブルワインの生産調整、1987年の改革ーさらなる生産抑制へ、

新たなプレーヤーとの戦い

1新世界の「発見」、1976年「パリ試飲会」の衝撃ーカリフォルニアワインの勝利、テロワール主義のゆらぎ、新興生産国のワイン造り・アメリカ・南米・オセアニア・南アフリカ

2悩ましい新世界、ワイン法がもたらした優位性、新世界は産地で勝負できなければ品種で、オールドワールドを悩ませる新世界の慣行ーアメリカ産をシャンパーニュ、栽培や醸造に関する新世界のルールーの選択の幅、新世界へ挑戦する欧州ワイナリー、シャンパンメーカーの新世界進出、結局は品種よりブランド力、

「危機」から新時代へ

11999年のEUワイン改革、競争力のためにー99年規制で新規植え付けと市場ニーズ、クオリティワインまで過剰生産にー蒸留措置、さらに増えていく余剰ワインー蒸留措置で補助金支給

2抜本的な改革を目指してー2008年の改革、「現状維持」の脱却へー2006年の報告書、現状分析の課題ー過剰生産・改革の目標と要点ー栽培制限撤廃と補助金廃止、そして合意

32008年の改革成功したかで、減反政策の帰結ー減反奨励金で面積減少したが生産量は変わらず、栽培制限制度の一部緩和・ラベル表示規制の改革ー域内統一表示、EU版セパ―ジュワインの容認へ、

4新時代のワイン法へ、

フランスの戦略ーワイン産業の競争力強化、「新世界化」するEU産ワイン、「輸出」されるGI制度(地理的表示)、

5ワイン法と日本

日本版「AOC法」の成立ー地理的表示法、酒類GIの運用ー表示基準制定、EUワイン法との「相互乗り入れ」ー日・EUのEPAー日本とEUで醸造方法と添加物を承認作業、EU法に近づいたラベル表示のルール、テノワール主義的な考えは世界に広がる

まとめ

ワイン法はなぜ生まれ、何を守るか、本書は、「本物」を守る戦い、「産地」を守る戦い、生き残りをかけた欧州の戦い、新たなプレーヤーとの戦い、「危機」から新時代への構成され、GI相互保護を進める動きも活発化しつつある状況に触れています