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報道

帝国日本のプロパガンダ 貴志俊彦 書評

帝国日本の国土拡大は戦争によりなされたが、日中戦争・アジア太平洋戦争で多くの人命を失い敗北、なぜ帝国日本はプロパガンダにとりつかれ「戦争熱」を持ち続けたか、手掛かりとなるビジュアル報道を紹介しながら、日清戦争から占領期までの50年間、政府軍部・報道・国民な関係をとおしてプロパガンダの変容過程を跡付けることを目標とします、著者は広島大学院博士課程単位取得、現在京都大学教授、専門は東アジア近現代史

日清戦争期

戦争と同期する帝国日本のメディア・演劇ー「戦争錦絵」の登場・錦絵業者の歓喜・錦絵と新旧演劇との交差・「平壌の戦い」と清軍イメージ、石版画が伝える大清帝国の「戦勝」報道ー「点石斎画法」に見られる愛国主義・「戦勝報道」の根幹にあるものー清軍勝利、写実的な欧州メディアが伝える東アジアの戦争風景ー欧州の絵入り新聞は写実的な細密画像にする方針で写実的な戦場イラスト・日本人の「戦争熱」の炎上と収束、

日露戦争期

帝国日本に浸透する写真・絵葉書・活動写真ー広報外交とメディアナショナリズムは戦費の外債依拠にある、戦況写真の登場と世論操作・写真利用の多様性でグラフ誌、絵葉書ブームの到来で集団的記憶・活動写真=映画の登場で「戦争熱」を煽る、ロシア帝国で流行する民衆版画と写真術ー農村部に広まったルポーク(木版画)で戦況を演出・奉天会戦はもっとも悲惨な戦いと記憶・都市部に普及した絵葉書や画冊を描いたのはプロの画家・「戦争熱」から革命運動へ

第一次世界大戦期

青島の戦いをめぐる報道ー戦争の発端は三国干渉の怨念と経済・日独報道合戦で新聞や雑誌の戦況写真・出版界も戦争企画・戦争画と戦争映画の人気、南洋群島の日独戦争ー西太平洋への帝国日本の進出は天然資源で委任統治領となる・ドイツ人捕虜の視覚化「大正三四年戦役俘虜写真集」・プロパガンダ史の画期点第一次大戦で・アメリカ・イギリス・ドイツ‣ソ連・日本で開花

中国、米国の反日運動

済南事件と日貨排斥をめぐる日中の報道ー国民革命軍と日本軍の衝突・戦況写真の空輸・戦況写真のリアリティ「山東省動乱絵葉書」・空前の映画ブーム・映画は戦争に積極的に関与・済南事件を受け上海での反日運動の組織化でプロパガンダポスター、排日移民法をめぐる日米の報道ー米国の反日気運は東洋人の学童隔離・「排米熱」の高まり・太平洋の東西からの冷たい視線は太平洋戦争の伏線となる

台湾霧社事件と満州事変

霧社事件をめぐる報道と政争ー台湾霧社セディクゾクの集団蜂起事件・朝日新聞事件写真とニュース映画・台湾総督府の失政で虐殺の第二霧社事件・霧社事件の政治化は国会での騒擾罪適用、満州事変報道と戦況写真ー満州事変の捉え方は中国民衆を煽った国民党のプロパガンダメディア・朝日論説は大転換で関東軍の意向に沿う・満州を伝えるビジュアルメディア「満州事変写真全集」と映画「日支両軍衝突事件」・満州と台湾での戦況報道は速報性「号外」

日中戦争期

日中戦争で「国民精神総動員運動」開始・活用された博覧会・写真映画・ポスター・国民を戦争に向けて動員すため写真宣伝・戦争のスペクタクル「日本にユース」の発足・軍事映画の製作・戦時下の博覧会ブーム「支那事変聖戦博覧会」・映画界が総動員体制に呼応し軍部からの支援を求める、複数の「満蒙問題」ー朝日所蔵の「富士倉庫資料」に眠る満蒙・三つの重大事件①熱河事件②チャハル作戦③ノモンハン事件

アジア太平洋戦争期

国家総動員体制下の言論封殺ー新聞メディアの死・致命傷は閣議決定「新聞の戦時体制化に関する件」・軍部に軍宣伝班その傘下に軍報道班・大本営が戦争報道独占・大東亜共栄圏構想流布・台湾沖航空戦の誤報で報道側の責任を指摘、国防のための台湾の「内地化」-台湾総督の統制権拡大と台湾軍司令部の検閲強化「台湾の内地化」・特別志願兵制度で台湾での徴兵は1945年4月・南方戦線の報道はプロパガンダ浸透のため現地新聞社設立・1945年6月「戦時緊急措置法」施行・議会解体で舵をもたない船舶の状態

敗戦直後

多様な「終戦」像ー「終戦の日」の解釈「玉音放送」「降伏文書調印」「サンフランシスコ平和条約」・ひとつひとつの「終戦」平和条約に調印しない国と個別に外交交渉し「終戦」を結実、GHQ占領下の日本ー占領統治の開始・軍は解体し行政機関などは残す・敗戦後の日本は・複合的制勢力によって形成・占領下の複数検閲システムの導入と教育啓蒙活動で図書館・映画、米軍占領下の沖縄ー米軍制のもとで「ウルマ新報」は検閲で発行・民間情報教育局設置「琉球弘報」・七つの移動映画班を組織・米軍のプロパガンダ工作は民生へ転換・琉球放送から「琉球ニュース」放送・トップが高等弁務官に変わるが全員陸軍中将・占領の正当性から反共の拠点に組み込む目的にシフト

まとめ

戦争や紛争は過去の歴史と同時に現在進行形、本書はローカルな問題をグローバルな視点で検証、対象は日清戦争から占領期まで、プロパガンダ主体の変容過程についてビジュアルメディアを通じて概観するこことにあります、日清戦争・日露戦争・第一次大戦・中国と米国の反日運動・台湾霧社事件と満州事変・日中戦争・アジア太平洋戦争・敗戦直後まで解説しています、