中国史を王の時代と皇帝の時代に区分、根本的違いを解説、習近平体制までを描いた意欲作です、著者は北京大学卒業、神戸大学院博士課程修了、現在評論活動、日本帰化
天下為公、古き良き「王の時代」
殷王朝の実態ー自立した地方勢力による「連合国家」で、地方に対する圧倒的な政治力と軍事力はない、盟主の役割は調整役・仲裁役、「神権政治」における王の役割の重要性、日本の天皇と相通じる面、占卜による意志決定、支配でなく奉仕、受け継がれた「天下為公」、貞人集団を中心とする「集団的指導体制」、殷王朝の公共性を担保するための交代制、王室と王統が特定の血族に独占されない、公のシンボル、殷王朝の崩壊を招いた文武丁の「集団化政策」
殷周革命と周王朝がつくりあげた封建制ー封土の直接支配を諸侯に任せるシステム、本家と分家の関係をつくる、同族による独占はなかった、摂関政治と似た政治スタイル、王人・小貴族・庶民に分けられた人民、血族集団を通してしか人民を支配できない、民衆が反乱すべき支配者がいない、江戸の幕藩体制との類似、公共性は地位に対する最大の保証、血族集団の関係性と連帯意識、「春秋」と「戦国」は全く別、覇権主義とは程遠い「春秋五覇」、鄭の救援に乗り出した桓公・当事者でないのに出兵・自国の利益追求より天下の秩序維持・「葵丘の会」の重要性・国際公法の尊守を約束させる・平和と正義の守護神、「尊王」しながら王に代わって仕事をする文公、互いに害しあうことなかれ、王に代わって秩序を守る「覇者」、「尊王」の姿勢を貫く、「王の時代」の延長線上にある時代、天下の平和秩序維持のための覇者体制が長期機能、
暗黒の2200年ー抑圧‣殺戮・革命の時代
戦国時代で終焉を迎えた「王の時代」、周王朝と王朝は「存在なき存在」に、「下剋上」の大量発生、天下秩序の完全崩壊を意味する魏・韓・趙の成立、失われた「公のシンボル」皇帝政治の権威、秩序の擁護者ではなく破壊者だった、「天下為公」から「天下為私」へ、人民を直接支配に置く、「変法」の断行、人民を直接支配する「郡県制」、嬴政による「皇帝支配の中央集権制」の新造、「一君万民」の政治体制の完成、政治のリスクをすべて背負うことに、「天子」の呼称で権力と権威を結合、わずか15年で滅亡した秦王朝、陰謀で王朝を握った趙高、中国史上初の農民反乱「陳勝・呉広の乱」、あっけなく帝国が滅亡、兵役と労役の強制徴用、兵役と労役が民衆による一斉蜂起の温床に、「王の時代」の封建制では不可能、やりたい放題が自身の王朝の縮める、権力の逆説、始皇帝による皇帝政治の確立こそ災いの始まり、
秦王朝滅亡の教訓に学ん「無為」の政治理念が前漢王朝の安定化につながった、「郡国制」という支配制度の構築、秦王朝の失敗に学んだグランドデザイン、「天下為私」の継承者となってしまった劉邦、万民に対する支配権が「財産」、劉邦の「異姓諸侯王潰し」と国家の私物化、皇帝及びその一族の家政担当機関、国家財政より大きい帝室財政、劉氏一族を次から次へ葬り去る、呂公も「志半ば」にして死去、諸侯王の領地を削る、いよいよ謀反せざるを得ない状況に、「後楚七国の乱」制圧で中央官僚に王国の支配と経営の全権を委ねる、歴史から姿を消す封建制、始皇帝から始まった「長すぎる皇帝の時代」、唐王朝は地方軍閥の戦乱をきっかけに衰退、宋王朝は珍しい異民族による侵略で滅亡、「紅巾の乱」「李自成の乱」から明王朝の終焉へ、民衆の反乱は天下万民の私物化が最大の理由、「反乱と易姓革命」の繰り返し、秦・前漢・後漢を飾る血まみれの殺し合い、跡形もなく消えた秦王朝、劉氏一族の殺し合い・後楚七国の乱、でっち上げの証拠で武帝に報告・武帝と皇太子戦争、桓帝は外戚梁冀の圧迫に12年間もひたすら隠忍自重で族誅、宦官に対する虐殺、
「新皇帝」を生み出す中国史のシステム
なぜ「皇帝政治」が中国から消えないのかー孫文を中心に「満州駆逐、中華回復、民国建国、地権平等」、中國史上初めての共和国誕生、辛亥革命の成果を乗っ取った袁世凱・帝政復活失敗、混沌たるカオス・不本意の乱世、新リーダー・蒋介石の出現、国民革命軍の快進撃で国民政府樹立、蒋介石が皇帝になれなかった理由は軍閥と日本軍、「皇帝への夢」を打ち砕いた共産党勢力、孫文に援助と引き換えにソ連が突き付けた要求は国民党と共産党の協力体制、「共産主義一揆」を起こして国民政府に対抗、国民軍は「革命本拠地」の大半を占領、日本軍の進撃で共産党存亡の危機から逃れる、
日本敗戦で毛沢東は敢然と反乱の道を選択、蒋介石と会談で「今のこの世を見るがいい」素晴らしい人物が現れようとしている、「真命天子」は自分のこと、なぜ北京を首都に選んだか=明清の都、「万歳」の対象は皇帝ただ一人、「反革命分子鎮圧運動」と称して71万人を銃殺、「人民のために奉仕する」生活の実態とは超贅沢、愛煙家のため「葉巻プロジェクト」チームの立ち上げ、国民はだれも知らないプールと別荘、蓄財の源は「毛沢東選集」「毛沢東語録」、私物化の「達人」、「高崗事件」で掌を返すように高崗を切り捨てる、「彭徳懐反党集団」のレッテル張り、「大躍進政策」は完全な失敗に、紅衛兵や不満分子を動員して幹部集団そのものをつぶしていく、己の権力欲のため天下国家を地獄のどん底に、林彪の敵・周恩来と組む、林彪は栄光の頂点からわずか2年半後に失墜、効かなかった周恩来対策、周恩来は13回目の殺人手術で病死、毛沢東の死は新たな権力闘争で四人組逮捕、鄧小平時代で毛沢東政治の全面的見直し、計画経済に改革のメス、高級幹部の定年制を導入、個人独裁に終止符、独裁者になれなかった江沢民、いっさい口出ししなかった胡錦涛、もし「2期10年」のルール通り展開していれば皇帝政治の終焉、習近平個人独裁体制の確立、習近平と王岐山の全面開花した「腐敗文化」の選択的摘発、精神上の支配においても「教祖様」に、四人組どころではなく十一人組に、「小組政治」の横行、一向に変わらない政治の根本
まとめー習近平という怪物を封じ込めよ
分権的な封建制VS独裁専制の中央集権制、世界全体を支配するのが皇帝の証明、周辺民族の征服に失敗するとマイナス評価に、台湾を中華帝国に併合した康熙帝、侵略戦争に明け暮れた毛沢東、戦争に控えめ目だった江沢民と胡錦涛、「終身独裁者」習近平、インド太平洋地域の平和を脅かす最大の脅威、政権3期目こそ最も危険、習近平皇帝の暴走を封じ込めなければならなりません