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宗教

四国遍路の世界 愛媛大学四国遍路世界の巡礼研究センター編 書評

四国遍路は弘法大師空海ゆかりの八十八ヶ所霊場を巡る回遊型巡礼、愛媛大学では四国遍路と世界の巡礼センターが開設され活動はじめた、本書はセンターに集う研究者が多彩なテーマで叙述したものです、編者は愛媛大学遍路・世界の巡礼研究センター、四国遍路と世界各地の巡礼の研究を行っています、

四国八十八ヶ所の成立ー川岡勉

空海の四国修行、四国の辺地は僧侶の修行場、空也の四国修行、山伏の修行体系に組み込んだ四国遍路、四国巡礼の大衆化、弘法大師信仰の広がりで八十八ヶ所の成立

四国遍路と古典文学ー西耕生

修験の霊地「しこくのへち」-四国遍路初見例の解釈、古語「へち」ー古典和歌に見る山伏修行、「反ちと申ししかた」「磯のへち」ー行尊・西行が赴いた場所、列島各地にある「へち」-水際に臨んだ険しい地勢、四国遍路以前ー「山踏み」と「へち踏む」「塩踏む」

江戸時代の遍路日記にみるー胡光

遍路日記の世界、江戸時代から続く四国の接待、江戸時代の宿泊事情は百姓家に泊まること、四国遍路における道後温泉の効用、四国遍路を終えて大師様のお導きに感謝

江戸時代の遍路統制ー井上淳

土佐は鬼国という言葉、宇和島藩の遍路統制文書、宝暦四年の遍路統制令、明和六年の遍路統制令、道中日記に見る遍路が歩いたルート、遍路統制の最前線にあった番所、安政南海地震による遍路の入国禁止、

道標石から見た四国遍路⁻今村賢司

遍路道標は常設の接待、遍路道標石は道案内・遍路時の証拠・善根石、真念の遍路道標石(江戸時代前期)、法房標石と太山寺の札鋏み(江戸時代前期)、武田徳右衛門の遍路道標石(江戸時代後期)、中務茂兵衛の遍路道標石(明治・大正時代)、文字や図表による遍路道標石の安内方法、遍路道標石の保存と活用、

四国遍路と女人禁制ー森正康

四国遍路と女性の増加、納め札に見る四国遍路、近代の女性遍路は35%、女性遍路の民俗として定着、四国遍路と女人不浄観、室戸崎における女人禁制、山岳宗教の四国遍路規制

四国遍路と明治維新ー中川未来

警察による「遍路狩り」、治安の不安から旅行の管理手段として身元証明書、乞食行為の禁止、「脱籍無産之輩」に罰、遍路統制の変化と伝染病とを重ねる問題点、四国遍路研究の可能性

弘法大師空海と四国遍路開創伝承ー大本敬久

「開創千二百年」ー史実と伝承の間、弘法大師空海の生涯、弘仁六年・四十二歳の空海四国霊場を開創、もう一つの開創伝承ー赤子の大師が母「あこや御前」に抱かれて四国巡り、

納経帳・般若心経・白衣ー寺内浩

江戸初期の遍路スタイルに納経帳・般若心境・白衣はない、六十六部が寺社に経典奉納し、納経帳を受け取る、四国八十八ヶ所を巡る遍路者の納経帳の普及、江戸時代の仏前勤行に般若心経なし、明治時代の仏前勤行で般若心経は任意、大正時代以降の仏前勤行も同じ、昭和になり着物から白衣の普及

俳句・文学から見る近現代の四国遍路⁻青木亮人

遍路と文学・種田山頭火、遍路を描く俳句、明治期・「遍路」が季語になる、著者による遍路観の違い・荻原井泉水「遍路日記」、「遍路」の響き・彼岸を想わせる

四国遍路と外国人ーモートン常慈

米国人フレデリック・スタールが初めて四国遍路、ドイツ人俘虜アルフレッド・ボーナー四国遍路、「ツーリスト」に見る戦前の四国遍路記事、米国人オリバー・スタットラー四国遍路「日本巡礼」、外国人遍路の実態は「おへんろ交流サロン」「遍路大使」「安楽寺」から、外国人遍路が書き残したコメントはポジティブ、今後の課題と最近の動向、外国人遍路の百年

現代における四国遍路の諸様ー竹川郁雄

現代の四国遍路の自由さ・自分スタイル、お遍路さんの半数は六十台以上、利用する交通手段はマイカー、遍路の目的は先祖・死者の供養、北海道テレビ「水曜どうでしょう」を真似て遍路する、四国遍路のお接待、遍路巡拝紀行書に見る「お接待」、歩き遍路をお大師様と見立てる、「お接待」を断り非難を浴びる事例、若い人による「お接待」、変わること、変わらないこと

アジアの巡礼ー高橋弘臣

明‣清を中心に中国における庶民の巡礼,泰山信仰の概観、碧霞元君の登場、明朝が碧霞元君を信仰・保護に伴い庶民に信仰の広まり、巡礼の時期は正月から四月、出発地は山東省、香会を組織、巡礼の様子、今後の課題

イスラームのー安田慎

社会的実践としての巡礼活動が機能する資源の蓄積、イスラームへの巡礼・参詣を見る、マッカ巡礼の社会システムを見る・喜捨制度と財産寄進制度・先達、コミュニティ実践から国際的システムへ・国家による一元管理と国際交通網の発展、市場経済化の巡礼システムを見る・巡礼ツアーを商品として売り出す「イスラーム旅行会社」が各地で勃興、新たな主体による資源の流れは、自律的なムスリム・コミュニティの育成を促す、

ヨーロッパの巡礼ー山川廣司

多神教から一神教成立、四年に一度の古代ギリシャのオリンピア巡礼、オリンピア巡礼の継続の歴史、オリンピアでの祭典競技会、中世キリスト教のサンティアゴ巡礼、サンティアゴ巡礼の歴史は、修道士が宿泊と食事、騎士団は護衛、ヒスパイア諸王は保護と発展に努め橋や病院、教会を建設、巡礼路「サンティアゴの道」・ピレネー山脈を乗り越えサンディアを目前に「歓喜の丘」から大聖堂を遠望、巡礼の苦しみから解放され聖ヤコブに会えることを実感、

まとめ

愛媛大学は地域研究テーマとして選んだのが「四国遍路と世界の巡礼」、各自の専門分野から共同研究進展、今では遍路と巡礼研究の拠点となった、本書によって四国遍路と世界の巡礼の関心が高まれば幸いです、