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東北

東北史講義/近世・近現代 東北大学日本史研究室編 書評

本書は幕末から近代に作られた「東北」が関心のもと、近世・近現代史を①中央との位置②各地との交流③中央の影響のもとでの地域の独自性から読み解いた、直面する東日本大震災は特論として据え、歴史学と現代社会の未来への展望を示した、編者は東北大学日本史研究室、若手と中堅研究者執筆者とした、

近世の幕開けと諸藩の成立ー兼平賢治

豊臣秀吉の奥羽仕置き、朝鮮出兵で要求された立ち振る舞い、関ヶ原合戦と奥羽の対応、江戸開府と国替え・一国一城令、奥羽が馬買や鷹師を介した武士の交流の場、家中騒動で奥羽の押し、元和・寛永の飢饉、証人制度と奥羽諸藩、藩は直仕置きから家老政治、殉死の流行で禁止令とそれに代わる剃髪

幕政の展開と藩主・18世紀の秋田藩政ー清水翔太朗

家臣が領地支配を担う地方地行制、官僚制、評定所と財政担当の本方奉行新設、古記録の蒐集と修史事業、序列設定、会所における合議が藩政運営の中心、享保の改革で今宮義透失脚銀札仕法事件で家臣団の「一和」と「旧」の政治、佐竹義敦の時代は百姓の生活維持と年貢収入の安定を図ること、職制改革で仁政の建て直しを志向したが家老との意向があり藩政の混迷に終止符打てず、子の義和は藩校設立と職制改革、郡奉行を設置し地域支配改革、改革派官僚を改革主体

社会の変容と諸藩ー天野真志

社会全体が成長から停滞、飢饉とロシアとの関わり、藩政改革と学問受容・米沢藩の菁莪社中を中心とする改革主導層形成、奥羽地域の藩校設置、藩校教育で人材登用、会読という討論形式の学問活動、学者の招聘と遊学・交流・知の広がり、政治関心から政治関与へ、政治動乱の眼差し、

幕末の諸藩と戊辰戦争ー栗原伸一郎

東北の形成に影響を与える幕末維新の動乱、圧倒的存在感は仙台藩伊達家、幕末政局と奥羽諸藩の対応・「国事運動」、探索や周旋を担う藩士登場、諸藩連携と奥羽連合構想、薩長と戦う認識、奥羽列藩同盟の成立と活動、列藩同盟と非「奥羽」諸藩を新政府がつなぎとめ、敗戦と「東北」、後進地

明治維新と東北開発ー小幡圭佑

東北開発の嚆矢は井上薫の勧農政策・舞台は青森の三本木開墾・陸奥国農会社設立、大久保は開墾の対象として「東北地方」、東北開発の諸相・三島通康は道路建設、

近代日本の戦争と東北の軍都ー中野良

近代日本の軍隊と軍都は相互依存関係、東北の軍都は仙台が端緒、東北6県に軍都の拡大、軍都の立地は城郭と町はずれ・経済的効果で軍隊誘致運動と存置運動、東北の軍隊派兵は朝鮮・威海衛攻略・台湾・日露戦争では重要な会戦に参加、昭和の戦争と東北の軍隊では満州事変・日中戦争・太平洋戦争で戦い続けた、戦後の軍都は自衛隊の駐屯地

戦時体制と東北振興ー伊藤大介

東北振興の起こりは「東北振興会」の設立・内部対立で解散、東北振興調査会の設置・6特別委員会を設け総合計画審議・東北振興は救済から国防に変化、東北興業と東北振興電力国策会社中心に進められたが東北振興の趣旨から離れた、東北振興の終結、戦後は東北開発三法成立、

戦前戦後の東北の流通経済・百貨店ー加藤論

連合共進会の動向と百貨店、中央百貨店の地方進出、戦前における東北の百貨店展開と戦後における東北の百貨店と流通政策・百貨店法

奥羽の幕領と海運ー井上拓巳

統一政権の直轄領と奥羽、陸奥国の幕領は福島県南部に限られ多くが周辺藩の預地、出羽国の幕領は最上氏の改易で幕領・山形と仁賀保藩の預領、奥羽諸藩の廻米は江戸や大坂に海上輸送することで藩財政の収入、奥羽の幕領城米は請負商人による、河村瑞賢による東廻り航路と西廻り航路、瑞賢の改良点は①幕府が雇用した廻船輸送②舟運機構の整備③沿岸地域に輸送船の保護を厳命④代官所による輸送体制確立、津軽海峡を越える城米輸送・奥羽海運と全国ネットワーク

神に祀られた藩主・弘前藩主 津軽信政ー澁谷悠子

信政は弘前城で誕生、山鹿素行に入門、幕府神道方の吉川惟足の門徒、津軽入国、治世を支えた素行派と実務官僚派、シャクシャインとの戦いに派兵、元禄の飢饉での失政、死後の神格化、もう一人の藩主は保科正之、

近世後期の災害と復興・防災ー高橋陽一

旅が広めた災害情報・橘南谿の「東游記」飢饉に関する伝聞記事、復興状況は家の軒数と米価・奥羽各地は豊穣な土地と評価、広大な未開発地、復興と温泉、防災社会と貨幣経済、限定的な観光復興、

東北開拓と地域有力者ー徳竹剛

大槻原開墾は福島県庁による開墾事業、阿部茂兵衛は郡山の有力商人で新政府は「生産方」に任命、入植者募集に苦慮、県官中條政恒を派遣、阿部茂兵衛に話を持ち掛け、①開墾参加は官庁の眷顧を得る機会②入会地の争いに終止符と考え参加意思、開成社の結社、小作人との対立から県庁との関係こじれ政変、人脈を失う、個人的関係は人の入れ替えで揺らぐ、

近代東北の教育と思想家ー手嶋泰伸

東北各県における旧制中学の設立、珍しかった中学進学と豪華な教師陣、中途退学の高さ、生徒たちのストライキ、

東日本大震災と歴史学ー佐藤大介

日本の地域に残る史料の危機、自然災害と「史料レスキュー」組織・史料の保全、宮城の史料レスキューは災害後の救済から災害前の保全、活動の柱は①所在確認調査②所蔵者ごとにデジタル撮影で古文書の内容記録「古文書写真帳」を共有、東日本で消えた古文書、文化財地域の史料の救済活動が展開、活動の中心は市民ボランティアたち、史料レスキューがもたらしたものー市民ボランティアの動向と意義・心の復興、歴史を再生する取り組みー地域誌と「大字誌」の編纂、被災地との関係が問い直す歴史学・研究者の役割、史料レスキューの可能性ー人を結びつけ人を支援する、

東日本大震災と地域社会・富岡町ー門馬健

複合災害と富岡町、大規模災害からの地域性保存・ふくしま歴史資料保存ネットワーク発足とみおかアーカイブ・ミュージアムを開館、富岡町は農林業中心から原発誘致で兼業増加原発と諸問題、地域資料保全活動から見える富岡町・生活環境と教育、震災後の町民の受容ー原発と共に生きた町、地域でこれから生きるために・町内のコミュニティ再構築には時間がかかる、

まとめ

諸藩の成立と日本、直仕置きから家老政治、秋田藩の事例、内憂外患と学問受容、幕末諸藩の列藩同盟、敗戦で東北の後進性、明治政府の東北開墾、軍隊と軍都の相互依存、東北道路建設、連合共進会と百貨店、奥羽諸藩の廻米と城米輸送、河村瑞賢、神に祀られた津軽信政、旅が広めた災害情報と復興、東北開発と地域有力者・人脈、旧制中学、東日本大震災と歴史学ー史料レスキュー、富岡町の事例、