感染症は、見えない敵とされ、妖怪の仕業とされたが、身体を狙う敵はどのような攻撃をしかけるか想像していたか、身体観を追求したものです。著者は大阪大学大学院博士課程修了、国際日本文化研究センター教授
見えない敵を可視化
日本の疱瘡対策は、疫病神を追い払う儀式、疱瘡見舞いに紅摺りの絵、麻疹は、はしか絵、頭痛、腹痛は売薬の広告、腹の中は「針聞書」、医師にかかる雷(患者)を描いた「雷鳴遠近図」、身体の興味から「驚異の部屋」、臓器を描いた「解体新書」「飲食養生鑑」「房事養生鑑」
狙われる身体
狙われやすい身体「足・手・目・頭・首・髪・腹・顔・背・尻」、頭中心の身体観から頭痛、神経症、ストレスの病名、腹痛は、腹の虫とクダショー、憑き物は祈祷師により回復、肩こりは「凝り」、膝肩腰の急な痛みにロクサン、風邪は、身体を狙う邪悪なもの、針灸のツボは「出るところ」「入るところ」
蛇に狙われる女性
耳を出入りする蛇は藤原時平の死、外で昼寝の女性に蛇が入り死、娘がマムシに襲われ死、蛇とズロース、蛇は女性を好む、蛇を抜き取る前掛け、
妖怪とジェンダー
蛇になる女性、道成寺では、清姫が蛇になる。沖縄の執心鐘入では、女は鬼になる、妖怪は雪女、山姥、妖怪画の媼、地獄の奪衣婆、妖怪一歩手前の小野小町と多様な小野小町
性と性器の表現
女性器が魔を祓う例・パラオ共和国の集会所の絵、妖怪・姑獲島の性器展示(荒井良)、勝川春章の性器の姑獲島、両性具有の妖怪として、怪談話「百物語」、「絵本おつもり盃」、巨大性器を祀る祭り・しねり弁天たたき地蔵まつり・長岡市のほだれ祭り、
身体の放つ異界のパワー
骨かみ、骨しゃぶりの習俗、薬としての胎児「奥州安達ケ原」、妊婦の腹を割いて胎児を取り出した生き人形(歌川芳晴)、臍の緒は万一の場合命を救う「日本産育習俗資料集成」、胎盤(胞衣)の習俗、胞衣を基に製薬した漢方を服用、胎児からできたお守り「クマーントーン人形」
胎児への関心
狙われる身体「妊婦と胎児」、明治の錦絵「妊婦炎暑戯」に描かれた胎児の成長、当時の出産環境、女性器の描写「閨中紀聞枕文庫」と胎内十月図「女重宝記」、大衆向け医学書の胎児は、千葉茂「造化機論」「通俗造化機論」、大川新吉「造化懐妊論」、錦絵「父母の恩を知る図」永島辰五郎
まとめ
まず、見えない敵を可視化、狙われる身体を把握、次に蛇に狙われる女性、妖怪とジェンダーを取り上げ、性と性器の表現、胎児、臍、胞衣のパワー、妊婦と胎児への関心を追求しています。本書で想像を如何に具象化して、敵に対処してきたかがわかります。