画家のイマジネーションの飛翔から生まれ、鑑賞者に長く支持され続けてきた、名画の中の様々な「異形のものたち」を取り上げ、それが生まれた背景を探ったもの、著者は作家・ドイツ文学者、
人獣ー私たちは何を恐れてきたのか
海への恐怖と人魚ー「人魚の戯れ」アルノルト・ベックリン、女面鳥身ー「オデュセウスとセイレーン」ハーバート・ジェイムス・ドレイバー、大罪を犯した者たちー「神曲 地獄遍 第13歌 ハルピュイアの森」ギュスターヴ・ドレ、理性の勝利ー「ミネルヴァとケンタウロス」サンドロ・ボッティチェリ、人面獣はなぜ描かれたかーピエロ・デ・コジモ「森の火事」、上下逆ージョウジ・フレデリック・ワッツ「ミノタウロス」、綺想の合体ー「水」ジェゼッペ・アルチンボルト、
蛇ー邪悪はいつでも傍らにいる
古今東西、蛇への恐怖、かって肢があったーヒューホ・ファン・デル・グース「原罪」、「イヴと蛇と死」ハンス・バルドゥング・グリーン、ギリシャ神話の蛇女ー「ラミアと戦死」ジョン・ウイリアム・ウオーターハウス、メドーサの蛇ーアリス・パイク・バー二ィ「メドゥーサ」/作者不詳「メドゥーサの首」,退治する者の思惑ー「アンドロメダを救うペルセウス」ヨアヒム・ウテワール/「果たされた運命ー大海蛇を退治するペルセウス」エドワード・バーン=ジョーンズ、北欧神話の大海蛇ー「ミッドガルド蛇と戦うトール」ヨハン・ハインリッヒ・フュースリ、九頭を持つ毒蛇ーアントニオ・デル・ポライウオーロ「ヘラクレスとヒュドラ」、下半身だけー「ケクロプスの娘たちに発見されたエリクトニウス」ピーテル・パウル・ルーベンス、
悪魔と天使ー善悪と美醜の形
聖書世界で異形を担うもの、初期の悪魔の姿ー「聖アウグスティヌスと悪魔」ミヒャエル・パッヒャー/「聖アントニウスの誘惑」サルヴァトール・ローザ、悪魔が「人間化」した理由ー「反逆天使の墜落」フランス・フロリス、男性性と悪魔の描写、ウジエ―ヌ・ドラクロア「空飛ぶメフィストフェレス」/ウイリアム・ブレイク「巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女」、疫病をもたらす悪魔ーマテイアス・グリューネヴアルト「イーゼンハイムの祭壇画」/作者不詳「ローマの嘴医者」、天使への恐るべき想像力、体を持たない天使ージョット・ディ・ボンド―ネ「聖フランチェスコの聖痕」/「オルガス伯の埋葬」エル・グレコ、人間化の過程ーギュスターヴ・モロー「ソドムの天使」/ティントレット「受胎告知」、傷つけられた天使ーフーゴ・ジンべり「傷ついた天使」、
キメラー存在しえぬものを求めて
絵画の中で生きるキメラ、合体の失敗作、制作者不詳「アレッツォのキマイラ」、閑話休題、作者不詳「キマイラと戦うべレロフォン」、日本のキマイラー歌川国芳の木曽街道69次の内「京都鵺大尾」、地獄の門番はたたずむー「フランチェスコ「神曲 地獄遍 第6歌ケルベロス」ギュスターヴ・ドレ、謎かけをするスフィンクス視線ー「オイディプススフインクス」ドミニク・アングル、信じたいことしか信じない、処女とユニコーンー「処女と一角獣」ドメニキーノ/作者不詳「12世紀大英図書館」、鳥の王と獣の王を足す、ジョン・テニエルのグリフィン/ドミニク・アングル「アンジェリカを救うルッジェ―ロ」
ただならぬ気配ー不可視の恐怖
廃墟趣味ー「ブナの森の修道院」カスパー・フリードリヒ、崩れ落ちたルーブルー「廃墟となったルーブルのグランドギャラリー想像図」ュベール・ロベール、画家の脳内風景ー「悪しき母たち」ジョヴァンニ・セガンティー二、無言の島ーアルノルト・ベックリン「死の島」/ギーガーの描いた「死の島」、めくるめくる建造物ー「牢獄Ⅶ跳橋」ジョバンニ・バティスタ・ピラネージ、パズルのようにーマウリッツ・エッシャー「滝」、こころが外界を異形にするーエル・グレコ「トレド眺望」、色彩も何もない部屋ー「室内」ヴィルヘルム・ハンマースホイ、物語のなさが物語を生むーエドワード・ホッパー「線路脇の家」
妖精・魔女ー忘れられたものたち
小さきものたちーカール・シュピッツヴェーグ「グノーム」/「そして妖精たちは服をもって逃げた」チャールズ・シムズ、絵画から生まれたヒット曲ー「お伽の樵のー入神の一撃」リチャード・ダット、魔女の集会ー「サバト」フランシスコ・デ・ゴヤ、聖女にして魔女ー「エル」ギュスターヴ=アドルフ・モッサ、
魑魅魍魎ー画家たちの歓び
きづかないーオディロン・ルドン「キュクロプス」/「夢魔」ヨハン・ハインリッヒ・フュ-スリ、かくれんぼー「愛の寓意」アーニヨロ・ブロンツイーノ、画家の歓びー「快楽の園 地獄」ヒエロニムス・ボス、洗練される異形ー「反逆天使の堕落」ピーテル・ブリューゲル、
まとめ
①人獣ー私たちは何を恐れてきたのか、②蛇ー邪悪はいつでも傍らにいる、③悪魔と天使ー善悪と美醜のかたち④キメラー存在し得ぬものを求めて、⑤ただならぬ気配ー不可視の恐怖⑥妖精・魔女ー忘れられたもの、⑦魑魅魍魎ー画家たちの歓び、光の届かぬ海底生物から顕微鏡で見る微生物まで、世界中のありとあらゆる異形のものたちを見られるようになった、それは画家の想像力を鼓舞するか、それとも委縮させてしまうのか、