本書は首里城の歴史と文化を解き明かし、再建に向けた礎を提示する画期的な書、監修は高良倉吉・琉球大学名誉教授・琉球史、編者は島村幸一・立正大学教授・琉球文学、
首里城を創るー高良幸一
寸法記に尚家文書を活用し正殿復元、御庭ゾーンの整備、その後焼失・再建作業
考古学から→
首里城の原点についての一考察ー山本正昭・沖縄県立博物館主任学芸員
正殿の原点はグスク時代の遺跡にみられる隔離空間、
出土陶磁器から見た首里グスクー瀬戸哲也・元興寺文化財研究所研究員
14世紀首里グスクの創建期は粗製品、15世紀陶磁器急増、明の朝貢貿易、16世紀陶磁器急減、多様な暮らし
コラム)トカラ・熊毛諸島の城郭遺跡ー伊藤慎二・西南学院大学教授
グスクの北限ートカラ列島の城郭遺跡、織豊系城郭の南限ー熊毛諸島の城郭遺跡
コラム)宮古・八重山諸島のグスク時代石積遺構についてー久貝弥嗣・宮古市教育員会振興課
宮古諸島の石積遺構①「高腰タイプ」②「元島タイプ」、八重山諸島の石積遺構①新里村西遺跡②ビロースク遺跡③フルスト遺跡
歴史学から→
古琉球期における首里城の様相と変遷ー上里隆史・法政大学沖縄文化研究所国内研究員
察度王代の首里城①高世層理殿と察度の伝承②14世紀における城内建築と崎山御嶽遺跡③寄内のガマ遺構、正殿と御庭を巡る状況・板葺き屋根の「塗料」と南殿の創建年代、「琉球国図」から見た15世紀の首里城①「琉球国図」中の「太倉」②15世紀中頃における首里城の様相③瑞泉門・美福門の共通構造
コラム)絵図から見た首里城ー外間正明・那覇市歴史博物館主幹
首里城を描いた絵図、描かれた首里城の特徴①首里城の向き②首里城正殿と大龍柱③城壁と城門、
近世琉球期の首里城ー麻生伸一・沖縄県立芸術大学准教授
首里城儀礼の近世的展開①薩摩役人への接遇②服属儀礼としての起請文作成③冊封使歓待の画期④国王親祭⑤先王祭祀⑥近世首里城儀礼の展開、冊封儀礼の重層性①冊封儀礼の式次第②冊封時の薩摩役人接遇、儀礼空間としての南殿
コラム)首里城で働く人々ー山田浩世・沖縄県教育庁文化財課専門員
庖丁人と王国①冊封使との宴会②国王の食事、首里城で働く庖丁人①18世紀における庖丁役②王朝末期の庖丁役、庖丁役を目指す人々①「御庖丁人江新家譜皮下候僉議抜」に記された庖丁人②「御雇い」という形態、
近代の首里城ー喜納大作・中城村教育委員会
首里城明け渡しと県庁設置、熊本鎮台分遺隊の駐屯、老朽化と自然災害、首里市の財政難と取り壊し決議、間一髪で救われた首里城、文化財として保存、昭和の修理工事、公共施設としての首里城①首里第一国民学校②首里私立女子工芸学校③沖縄県立工業徒弟学校④首里公会堂と郷土博物館、沖縄戦と首里城、
文学・芸能から→
祭場としての首里グスクー島村幸一
首里グスクの朝拝儀礼、朝拝儀礼で謡われたオモロ、神女達の朝拝儀礼、
芸能の舞台としての首里城ー茂木仁史・国立劇場おきなわ調査養成課長
琉球国・16~17世紀冠船躍①7宴②龍舟の戯③入子躍④祈りの芸能、1719年の御城舞台①玉城朝薫②御城舞台③「中山伝言録」の御城舞台、冠船躍舞台1800~1866年①1866年の御城舞台②1866年の天使館舞台③稽古場ー戌年「冠船躍方日記」
漢詩に詠まれた首里城ー高津孝・鹿児島大学教授
冊封使たち、初めて漢詩に詠まれた琉球と首里城、円覚寺と龍潭、冊封儀礼と竹枝詞、儀礼の場としての首里城、著名な書家王文治の来硫、奥武山から見た首里城、琉球処分後の首里城、
コラム)首里グスクの御内原ー島村幸一
首里グスクの御内原、御内原に住まう女性たち、御内原のその後・中城御殿の御内原、
散文に描かれた首里グスクー仲程昌徳・ひめゆり平和記念資料館代表理事
山里永吉「首里城明渡し」で琉球王国崩壊、沖縄戦、「首里城の復元期成会誕生 会長に屋良知事、「琉球王国衰亡記」刊行、新聞連載小説は石野経一郎「守礼の門、大城立裕‣嘉陽安男・船越義彰の登場
短歌のなかの首里城ー屋良健一郎・名桜大学上級准教授
「琉球新報」の短歌投稿欄「琉球花壇」から近代の首里城、戦後の首里城、正殿復元後の首里城、
建築学・工芸から→
中華礼制藩国礼執行装置としての首里城ー伊從勉・京都大学名誉教授
首里森グスクと真玉森グスク、西向き正殿と藩国礼執行装置の起源、洪武礼制藩国礼⓵藩国迎詔儀と受印物儀、冊封使における闕庭・龍亭・香案の設置場所の変化①正殿正中に闕庭を設けた時代②正殿基壇上の前楼を中核的装置の正面にする時代③御庭を冊封儀の儀場にする時代、藩国礼迎詔儀が強いた正殿の平面形態の制約、
首里グスクの「異産至宝」ー上江州安亭・漆工史学会会員
古琉球期の「異産至宝」①明代の琉球国王印②京の内出土の貿易陶器③二階御殿出土の貿易陶器と天目茶碗④島津氏の琉球侵攻⑤徳川家康の琉球漆器⑥壇王法林寺、近世琉球期の「異産至宝」①清代の琉球国王印②尚王家の書画コレクション③美御前揃三つ御飾之御規式
首里グスクを中心とした衣文化ー久貝典子・沖縄県立芸術大学附属研究所共同研究員
国王から諸臣の衣裳について①明から賜与された衣裳②近世琉球の史料に見る冠服③「衣裳定」について④バーツという織物、庶民の衣裳について、女性の衣裳について①士族女性の礼装②城内の女性の衣裳、首里を中心とした衣文化
首里城を知るための10冊ー輝広志・首里城公園管理部事業課広報企画展示係学芸員
①首里城研究グループ「首里城入門 その建築と歴史」ひるぎ社②真栄平房敬「首里城物語」ひるぎ社③首里城研究グループ「首里城ハンドブック」首里城公園友の会④那覇出版社「写真集 首里城 今・昔」⑤野々村孝男「首里城を救った男 阪谷良之進・柳田菊蔵の軌跡」ニライ社⑥首里城復元期成会「蘇る首里城 歴史と復元」⑦首里城公園友の会「首里城の復元ー正殿復元の考え方・根拠」海洋博覧会記念公園管理財団⑧首里城研究会「首里城研究1~22」⑨當眞嗣一郎「琉球王国の象徴 首里城」新泉社⑩高良倉吉・平良啓・上里隆史・石塚由紀子「別冊 太陽 首里城」平凡社
まとめ
考古学から、隔離空間・出土陶磁器・城郭遺跡・グスク時代石積遺構、歴史学から古琉球期・絵図・近世・庖丁人・近代、文学・芸能から祭場・芸能の舞台‣漢詩・御内原・散文・短歌、建築学・工芸から中華礼制藩国礼執行装置・「異産至宝」・衣文化、最後に10冊の参考書を網羅し礎を築いた、