日本の農村社会学は、日本の農村の研究を行う研究分野であるが、日本を知るためには外国との知識も大事、日本の農村社会学者の調査研究を手掛かりに、アジア農村の姿を学びたいこの東アジアでは東北と東南を取り上げたい。著者は東北大学院博士課程取得、東北大名誉教授、専門は社会学
まず北へー日本、韓国、中国
日本農村ー長野県富士見町瀬沢新田
開発移住の瀬沢新田、単一の家から複合の家へ、日本の家は家経営体、水利慣行の形成過程自営の農業と農間稼ぎと貢租・商品交換、四つの組、神社・寺院・小祠・社祠の三重階統構造、自治と祭り、家の相対的自立
韓国農村ー忠清南道唐津郡大湖桃李里
宜寧南氏一族によって開拓された村、桃李里は宗族マウル形成、日本の武士の帰農は百姓身分、戦後の変化・農地改革で自家労働力主体の経営、両班マウルの二重原理・宗族と同族の違い、桃李里の運営・三つの集落と班・総会と開発委員及び班常会、チプ・家族・家口、桃李里の家族は、マウルに夫婦のみで子女は他出・家族継承・宗族集団と宗族マウルは表裏一体、新洞水利契、契員は水税を納める、畜産業は畜産と酪農の協同組合、労働組織はトウレ(全戸参加体)・プマシ(気の合う者同士)・賃労働、祖先崇拝と民間信仰、
中国農村ー山東省莱蕪市莱城区鹿野郷房幹村
房幹村は山村、収穫少なく出稼ぎ、八路軍入村、土地改革、人民公社、文化大革命、三人家族、貯水池の築造と人民公社解体・農地再編成、村の祭祀と信仰生活の復活、家族の継承は分家、均分相続し息子の家に順番に世話する、結婚式と葬儀は紅白理事会が主催、父系出自親族集団の特徴は平等、農村工業化と労働問題は、水庫・果樹を集団所有、耕地は分配、村営企業創設、信仰世界と村落祭祀は、土地神がポイント、
日韓中農村比較
定住を前提とする日本「家」、移住を前提とする中国・韓国「宗族」、中国の自然災害・韓国の混乱が歴史的背景、中国で「仲間は伙」、移動前提集団は「帮会」、韓国では「ウリ」日本は集団としての信仰活動、仏教は中国・韓国では寺壇関係組織は存在しない、中国・韓国は個人本位、共通しているのは土地の神を祀る、
南に向かってー東南アジア
東南アジア農村の「基層」ータイと台湾
東南アジアは小人口世界、交易社会と農業社会の二重構造、支配層が大都市、農民は集落、戦後農村社会は、農地改革不徹底、工業化で農村から都市流出と「緑の革命」、タイの村落社会の伝統的姿は東北タイ、村落社会はムアン(国)とバーン(村落)、屋敷地共住集団は8集団前後に構成、村落内部は、乾季は農外労働、移住により村落成立、屋敷共住集団は、田地を割り当て耕作、共同生活から人的資源弱体化で近接居住世帯群が増える、家族は「女系原理の優位性」に父系性導入、妻方居住・男女均等相続・夫婦別財産システム、産業化と複合家族形態が出現、台湾は先住民・閩南系・客家系・外省人、伝統社会は宗族集団、社区形成、南部W社区は伝統的な客家村で社区理事会創設、前期は公共基礎建設、後期は観光発展
東南アジアの農村の「地方的世界」ーラオスと雲南、べトナム
地方的世界とは地域的再生産体、稲作と仏教、ヒンドゥー教、メコン圏はインドシナ半島、ラオス北部農山村は、人口流入頻繁、ラオスの人々はながく小人口分散型の社会を生きてきた、北部における農村都市関係は買い物、雲南で馬帮の発展は、六大河川が峻険な地勢を反映して南北流れ急で、陸運発展、大鍋頭は首領、伝統時代の西南ムスリムは馬帮を媒介に自然村と社会圏が共変的に関係、べトナム北部の村落は運命共同システムと文化装置、
東南アジア島嶼部ーインドネシア、
ジャワ島での対象地は中部ジャワの二農業集落、相続は男女分割相続、行政村はクルハラン自然村と区別、ゴトン・クラン(相互扶助慣行)、イスラム教は生活の基調、農業は零細所有で複雑な耕地の貸借関係、共通して稲作の発展と刈取作業の変化、「貧困の共有」農業新技術導入と農外収入、世帯は夫婦と子供・独立・分割相続のライフコース、住民の交流と共同活動、バリのデサ(村落)は慣習と制度の二重の糸、観光開発で農業と農村の変貌、対象地はプモガン村、行政を構成する16の村、プモガンとクパオン慣習村、二つの水利組織、協同作業は雇用労働に、
ふたたび北へー中国
中国農村社会の構造ー華中と華北
華中農村ークリーク地帯、土地所有関係ー田底田面所有権の分離、水田の灌漑は水牛が水車子を率いて廻る、農業労働は自家労力、農村副業と日用品購入、華中農村の家族は平均5人均分相続から見た家族の性質は個人、華北農村の集落ー土壁、村落の自治組織は公会、求雨と驅蝗、宗教的な協同・経済的な協同、隣接村落との連携、村落の組織は有力地主が運営、村落は孤立的密居制
「沸騰する」華北平原農村ー河北省辛集市新塁頭村
中華人民共和国初期の農業集団化、耕地の請負期限30年、郷鎮企業の発展、失地農民が増大、新農村建設と脚光を浴びていた人民公社、中国河北省社会科学院との共同調査・新塁頭村・農業機械サービス・センター・水利の状況・事例農家と自家農業の現況と動向・農外の職業、「沸騰状態」の中国農村・その問題、村の行政は村民委員会、10年後の変化、
華北農村における新農村建設ー山東省平陰県
農業共同組織歩みは互助組形成、農業産業化の歩みは農産物加工、農村合作経済組織類型は農民専業協会と専業合作社に集約、山東省事例に見る共同出荷組織、集住化、「三農問題」とは都市と農村の格差、新農村建設政策の内容は「小城鎮」の建設・晃峪村の事例・生活の変化・張山頭村の事例、集住化のなかでの問題点、社区コミュニティなのか
蘇南農村における経済発展
沿海部農村経済発展の三つのモデル、離土離郷とは脱農離村、食料自弁の転籍・暫定戸籍の認可、蘇南地域における工業化農村M村の事例、村民への分配と村民生活は工業社会の生活内発的農村工場化は可能か、
そして今ー2000年代の中国
村の自治は社区居民委員会に転換、反対する「アウトロー的行為の正しさ」、「団地移転プロジェクト」の導入と住民の言い分、中国の村と外圧等で「尺蠖の屈め」
まとめ
日本農村を知るために、東北アジアと東南アジアの農村研究、再び中国農村研究で、多様な姿が描きだされていることを認識できます。人々は、自然と歴史の中で懸命に生産と生活を送っています。