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政治

プーチンの国家戦略 小泉悠 書評

ロシアの安全保障情勢を左右するプレイヤーとして急速に台頭したのはなにか、ロシアの行動基準に対し、軍事の切り口採用しウクライナ侵攻以前のロシアを描いた、著者は早稲田大学卒業、政治学修士、未来工学研究所客員研究員(当時)、

プーチンの目から見た世界

ロシアの小噺・アネクドートの国、「ロシア崩壊」を恐れたプーチン、ソ連崩壊は20世紀最大の悲劇だった、初期のスローガン「垂直的権力構造」の再構築、従わないユコス脱税で破産、広がるメディア統制、高度成長下でプーチンの「社会契約」とその綻び・GDP伸び悩み、石油と天然ガスの変わらぬ財政構造のいびつさ、政治的自由の制限強化、「西側」への不満・NATOの存在、プーチンの大西洋主義とその行き詰まり=冷戦の敗者、「勢力圏」をめぐって、グルジアのNATO加盟で遂に「発火」、メドヴェージェフ「外交5原則」特別利益を持つ地域、オバマ登場で「リセット」の「リセット」食い違い、介入政策へ、プーチンの「ユーラシア連合」構想はEUモデル・旧ソ連諸国の統合、ウクライナ問題から見えるロシアの不満と不信感・体制転換

プーチンの対NATO政策ーロシアの「非対称」戦略とは

1ロシア軍の復活ーソ連崩壊後のロシア軍-凋落から部分的回復へ、プーチン政権の軍改革構想はコンパクト、推し進めたセルジュコフの汚職で失脚とその後復帰、2NATOに対する「弱者の戦略」ー決して強くないロシアの軍事力、「地政学的リベンジ」としてのハイブリッド戦争・クリミヤ半島、3ロシアの軍事力を支える「介入」と「拒否」-特殊作戦部隊と空挺部隊、抑止力強化のための戦略・黒海の防衛体制、

ウクライナ紛争とロシアーハイブリッド戦争の実際

1「ハイブリッド戦争」の方法論ー奇妙な戦争・正体不明の軍隊の出現、クリミア半島をめぐる歴史的経緯・問題を蒸し返し圧力、ロシア的用語法「ソフトパワー」2クリミア半島電撃戦ーキエフでの政変と介入の始まり、本格介入へ、包囲網の完成、3泥沼化するドンバス紛争ーもう一つの「ハイブリッド戦争」ー襲撃部隊を率いたイーゴリ・ギルキンは国防相にウクライナ反抗で劣勢に陥る親露派武装兵力、ロシアによる直接介入、4ロシアにとっての「ハイブリッド戦争」ー「21世紀の典型的な戦争様態」?、外交的圧力のツールとして機能、

「核大国」ロシア

1ロシアと「核なき世界」ープーチン発言の衝撃・核兵器使用の可能性、核戦力の現状は大型ICBMの開発で世界2位、非戦略核戦力をめぐって・戦術核兵器は世界1位、2積極核使用ドクトリンへの傾斜ーロシアの「地域的核抑止力論」大規模戦争懸念、「エスカレーション抑止」論の浮上・西側エアーパワー精密攻撃に対処、「戦略的抑止手段としての核兵器の使用」可能性、「サーベルの脅し」・背景に通常戦力の劣勢

旧ソ連諸国との容易ならざる関係

1不信の同盟CSTO-ソ連崩壊後のロシアと旧ソ連諸国、CSTOの概要・集団安全保障条約機構、アルメニアとアゼルバイジャンとでカラバフ紛争をめぐってアルメニアを支援していない、深まる各国間不信感、2「同盟」のレゾンデートルー勢力圏維持のツールとして、ウズベキスタンの拒否権をめぐる混乱、ウズベキスタンのCSTO参加停止の意味はアフガニスタンとの利害関係から、米軍の軍事拠点提供はない、ロシアからCSTO加盟国への武器供与、忍び寄る中国の影響力、ロシアとベラルーシの関係・前線基地化に懸念、3ミンスクに「礼儀正しい人」が現れる日ー旧ソ連諸国に君臨し続ける権威主義的な指導者たち、トルクメニスタンは平和裏に権力移譲、ベラルーシは愛人の息子を寵愛、ロシアの出方-ウクライナ型「ハイブリッド戦争」を仕掛ける

ロシアのアジア・太平洋戦略

1日中露の三角関係-プーチンの極東戦略は分裂回避、中露の蜜月、中国に引き込まれるロシア、同床異夢としての中露関係-ロシアは日本に何を求めるか、中露は「パートナー」でロシアが利用される、日本とは「油断ならないパートナーシップ」、2極東ロシアの軍事力⁻進む北方領土の軍事インフラの近代化、要塞化されるオホーツク海・中国の北極海進出に懸念、

ロシアの安全保障と宗教

1宗教をめぐるポリテクス―多宗教国家ロシア、プーチンはロシア正教会とのつながり重視、旧ソ連諸国と正教会の関係に自主管理協会の地位はない、三つの正教会が併存するウクライナ・独立論のくすぶり、2ロシアの安全保障と「イスラム・ファクター」ーロシアにおけるイスラム抑圧と人口増加、緊張の火種ー非白色人種に対する敵意、国家的・社会的安全保障に対する脅威から伝統宗教や教育の役割強調、愛国心の高揚装置「夜の狼」・ロシアとムスリムの憎悪、不安定化する「柔らかな下腹部」-中央アジアにおけるイスラム過激派、ロシアにとっての新たな脅威、3「イスラム国」とロシアー独立闘争からイスラム革命闘争、「カフカス首長国」の成立で北カフカス全域におけるジハード、復活した大規模テロ、離反者による「ISカフカス州」、カリフ制再興のISに身を投じる人々の増加、

軍事とクレムリン

1「シロヴィキ」の台頭ークリミア介入を決めたKGB「4人組」、エリツインの「KGB分割統治」、プーチン政権を支えるKGBコネクション、2シロヴィキをめぐる軋轢ー軍という「聖域」・非軍事に鈍感、軍にメスを入れたプーチン・政治的位置づけ、ロシア軍の「目」と「神経」をめぐる闘いGRU、軍の逆襲ーセルジュコフ国防相をめぐるスキャンダルの暴露でプーチンと応酬、訴追はない、存在感増す後任ショイグ、ショイグの変貌・全ロシアの国民のリーダーを目指す、ピノチエト・モデルは権威的政治体制と市場経済の混合、シロヴィキVSシロヴィキ、パトルシェフVSチェルケソフの争い、幕切れ、3「国家親衛隊」をめっぐってー長官ゾロトフのリベンジ・不自然な昇格、「第2のロシア軍」、背景に大統領選を睨んでの戦略か、

岐路に立つ「宇宙大国」ロシア

1宇宙作戦能力の回復ー「宇宙大国」の失墜・資金力を欠く、プーチンの宇宙開発プロジェクトGLONASS用衛星の運用体制の回復、ロシア初の「宇宙戦争」湾岸戦争、宇宙攻撃能力を目指すのは米国の能力発揮妨害、軌道上での奇妙な振舞い、対衛星ソフト・キル手段は敵衛星の機能妨害、2宇宙産業の建て直しはなるか―苦境に立たされるロシアの宇宙産業・技術力と人材不足、ビジネスに走るロシア宇宙産業、深刻な人材不足、他国の競争相手の台頭、宇宙改革をめぐる対立と混乱・国営企業「ロスアトム」の宇宙版、国家コーポレーション・ロスコスモスの成立、コマロフ流改革のゆくえは目標と実利用、3もう一つの重要課題ー外国依存からの脱却ー新宇宙基地ヴォストーチュヌイ建設へ、基地建設をめぐるスキャンダル、ようやく新基地運用が始まる、「ウクライナに1個コペイカもやるな」ー純国産ロケット「アンガラ」の開発へ

まとめ

2014年以降ロシアは強硬姿勢、実態は国力・軍事力で米国と正面から対峙しうる能力はもはやない、軍事的緊張は一定レベルに低下協調関係が復活するだろうが、プーチンの恐れたロシア崩壊の懸念はある、本書は彼らがもっているルールブックを覗き込む踏み台となることを意図した、