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民家

生き続ける民家 中村琢巳 書評

民家の「保存と再生」に着目、建てられた歴史から、伝えられた歴史の転換、民家が地域社会に根ざした共同作業で作られている視点で、前近代の伝統世界と現代の民家再生の流れを示し、現代の立ち位置を明確化したい、著者は東京大学院博士課程修了、現在は東北工業大学准教授、専門は建築学

長持ちする建築の仕組み

中世民家から近世民家へ

堀立式から石場建てへ、柱部分の軸部と梁桁上部の小屋組み分離、和小屋とサス組で柔軟性を備えた構造、

長持ちを支えた技術

木と木の連結・継手仕口、野物は骨組み・化粧は意匠、適材適所に木を生かす(土台は栗、柱は杉・意匠は欅)、増改築受容な空間的な懐の深さ、境界的空間・下層の庇、下屋の改造土壁や襖がもつ重層性・下地と仕上げ、畳はカスケード式に利用、部材や空間の規格化

民家が群れとして耐久性を獲得

耐久性の前提となる石場建ては支配層、19世紀・庶民に石場建てが普及する時期、耐火性を考慮した土蔵・大壁、東日本で普及した蔵造りの街並み、町並みは社会と文化のクライマックス・民家が耐久性を備える、成熟時代としての19世紀、

循環した古家と古材

繰り返された普請

変幻自在な民家・普請の繰り返し、普請語彙を読む「普請願書」、新たに建てる「取建」、繰り返された「取繕」、「仕添え」や「仕立替」は不具合、「引移」・移動再建などの幅広い建替、保管された局面・習慣、古材を使いまわす一生、

災害と古材リサイクル

都市大火で頻出した民家の移築、移築の文化圏は交流があった土地柄、村から集めた仮家建で凌ぐ、地震については改造や取繕、

売り立てられた古家と古材

分散帳については・借金した百姓が屋舗を売った代金で返済した記録、売り立てられた古材は多岐、古材を購入した人々は建築工事のため、空家リサイクルの一般化した仕組み・購入者は村人で経済的理由から、

森や木を備える

建築用材の規制

火災後の再建などで木材が常に必要、平面規模の規制から伐採の抑制、樹種を制限、

「備林」について

普請に備えた森林、「日本林制史資料」にみる事例・伐採禁止など、備林が設けられた藩の建築、寺社の修復林、民家の備林、森林保全を促した建築

材木蔵や木小屋の「圈木」

木材を貯えた習慣「囲木」、有力町民が貯えたヒノキは居宅と借家用、建築は森や木とともに伝えられた、

植物性材料の確保

民家に使われた多様な植物性材料・茅・杉皮、茅場の確保のため、茅を供給するための維持管理地が「茅場」、茅の保管は小屋裏、

職人衆の出入り

日記が語る職人衆

生活資料の貴重さ・日誌形式の記録「富沢家日記」で、日常メンテナンスを綴る、民家に出入りした職種、出入りの推移を記録、

職人衆の多様な仕事

大工は雑多性、植木屋は庭仕事、屋根屋は継続的手入れ、畳屋はメンテナンス、左官は竈の手入れ、黒鍬は植木・石・土に関する仕事、

出入りが持続した背景

職人の仕事の多様性はメンテナンス、家主の普請道楽、メンテナンスの季節的循環、衣替えのような手入れ・季節性

地域ぐるみで民家を守る

地域の暮らしと民家

年中行事帳は伝承すべき認識、行事と掃除の指示、各所の飾りつけ‣神棚と仏間、人々への振舞い・酒・夜食。雑煮

町並みの景観を整える

町家の特徴は共通文化、町家の表構えは町の 顔、ルールを共有して都市の環境を保つ、

相互扶助の農家普請

農家の普請は村人と職人の分業で成り立つ、地域共同の茅屋根葺き、普請帳は語る・勘定帳と見舞い帳、地域固有の暮らしと社会は相互扶助で守られた、

災害に備える

開放的な民家・夏を旨、災害への脆弱さ、火災を防ぐ土蔵造り、地域ぐるみの消火として都市用水、地震への備えとして「柔構造」、地震避難の工夫「地震の間」、雪国の都市的工夫「雁木」、雪害対策の民家形成・切妻造り、風水害から民家を守る「屋敷構え」、自然との共生

民家を救った近代の価値発見

自然共生型の衰退

建築学の盲点は伝統の衰退、製材からみた変化は機械化、機械製材の進展と古材転用なし、暮らし方の変化・民家の改造、

茶人が再生した田舎家

古建築移築による邸宅・横浜三渓園、田舎家の自在な再生手法・益田鈍翁の「白雲洞」茶室農家の古色・松永耳庵の「柳瀬川荘黄林閣」が東京国立博物館に移築、杉戸を床の間に見立て文化財救済としての保存論・廃屋となったものを対象に移築は保護救済に措置、

学問としての民家の発見

大正時代の「白茅会」は建築学と民俗学合流、今和次郎の民家研究で訪れた民家、民家採集の成果は比較文化論、建築史学の民家研究に歴史的・復元的手法、痕跡調査から過去の姿を復元考察する、編年指標で整理する、多彩な民家研究の展開・文化財保護、近代機能主義からの評価・伊藤ていじの「民家は生きてきた」、建築家たちのデザイン・サーヴェイ、

文化財としての民家の保存

文化財修理と民家の保存・吉村家復元、文化財修復の場が継続居住で生活との課題、民家村の登場・日本民家集落博物館、系統展示で周辺環境も再現する、民俗学と連携した活用・民具など、町並み保存の登場・中山道の妻籠宿、伝統的住宅を推奨する修景という設計手法、価値発見が消えゆく民家を救った

まとめ

民家の保存と再生・守り伝えた歴史に転換、資源保護と現在を意識して、長持ちする建築の仕組み、循環した古家と古材、森や木を備える、職人衆の出入り、地域ぐるみで民家を守る、民家を救った近代の価値発見まで描写、民家の価値を見つめなおしています