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壁と卵

梶谷懐 日本と中国経済を読む

皆さんは日本と中国経済は今どうなっていると思います。本書は神戸大学梶谷教授が、日本と中国の関係をどう考えていけばよいかに就いて描いています

戦前の労使対立とナショナリズム

いかに中国に統一的な国民経済を形成するか、列強による資本投下と軍閥による分権統治、不安定な政情下で、押さえておきたいのが貨幣、雑種幣制。繊維産業は拡大したが、生産過剰、永続きしない、在華紡と中国産業は相互に利益をもたらしたが労使対立、会社派と土着派の対立、民族資本を守るロジック成立せず。「北伐」の成功で南京に統一政権成立、関税自主権の回復と公司法(株式会社の前身)、財政の中央集権化を図った。日本は満蒙領有論・金解禁論争、そして中国は「雑種幣制」から「元」に統一、対中国のまなざしは、脱亜論・実利的日中友好・新中国との連帯

日中開戦と総力戦の果て

国民政府は日本を敵と認識、日本は親日政権樹立・預合いによる軍事費調達をもくろんだが失敗、しかも日本軍の侵略は有効的な経済をズタズタにした。総力戦は消耗戦、日本敗北。新憲法の下で国民党政府は、独裁色を強め支持を失い共産党に敗北します

毛沢東時代の揺れ動く日中関係

中国共産党は新民主主義採択、土地改革で自作農、産業の国有化を図る。日本外交は中華民国と国交、日中間は民間貿易。朝鮮戦争を機に計画経済・農業集団化・国有企業へ資本集中・中国人民銀行創設「日中民間貿易協定」締結・岸内閣は政経分離、結果・大躍進政策失敗。対日強硬姿勢から友好貿易・実験派権力回復、毛沢東の文革からニクソン大統領訪中あり、日中国交正常化

日中蜜月の時代とその陰り

国交正常化後貿易協定、華国鋒による四つの近代化実施が批評され、鄧小平が登場、人民公社解体・国有企業改革(経営者の自主権拡大)・財政金融改革(地方から中央へ)・対外開放政策で海外資本へ門戸(胡錦涛と趙紫陽)が開かれた。そこに天安門事件・政治的理想主義の柱が失われる分岐点となりました

中国経済の不確実性をめぐって

日中間の経済関係の中心が、技術や経営のノウハウの伝達などソフト面での交流をも含めた製造業中心の直接投資に移っていきますが、チャンネルは重化学工業プラント産業関係者で十分対応できませんでした。中国経済の制度化で「分税制」朱鎔基の発案、人民銀行の機能強化・金融機関と地方政府の切離し・市場メカニズムの導入・国有企業の単位社会解体・WTO加入です。対中進出ブーム、中国投資ブームが起こり、反対に対中国感情は悪化、貿易摩擦発生反日デモにつながります。習近平は自由主義的な社会・経済改革を明確化、反腐敗キャンペーン、一方で言論弾圧、社会主義イデオロギーの強化と「改革は見せかけ」と批判されています。労働者を取り巻く環境は厳しく、日系企業で相次ぎ労働争議が起きていますが、今後日中間の経済往来は急速に縮小することはない以上、「不確実性」と無縁ではないでしょう

まとめ

日本と中国、水魚の交わりとならないのは、根本的に社会の仕組みが違うからです。本書は戦前の労使対立・ナショナリズム、日中戦争、毛沢東の時代、鄧小平の開放政策から習近平まで及びます。