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縄文農耕

小宮孟 イヌと縄文人を読む

皆さんイヌと縄文人の関係はどんなものだと思います。本書は総合研究大学院大学小宮研究員が描いたものです

動物考古学とイヌ

最も古いとされるイヌは、イスラエルのアイン・マラッハ遺跡の幼犬、ベルギーとチェコの洞窟遺跡からヨーロッパ始原の犬出土、犬の家畜化は、人が大型獣を仕留め、残飯に近づいた狼を選択することだった

初期縄文犬と縄文人

東アジアのオオカミとニホンオオカミの差から縄文犬は大陸渡来と考えられ、犬骨の時期が早期中葉に確定すれば広い範囲に分布、早期後半は遺跡数は少ないが上黒岩陰遺跡は国内最古の埋葬犬出土、前期になると出土頻度増加、埋葬犬骨は上黒岩陰遺跡に次ぐ古さ、中期以降は埋葬犬骨急増、埋葬文化を伝承しています

埋葬されたイヌたち

縄文犬の骨の特徴ー①小型犬主流②大陸渡来③頭骨を側面からみると前頭骨から鼻先にかけて傾斜直線的④眼窩の最高と最低を結ぶ線は現代犬より後方に傾斜⑤生前に切歯など歯牙の前部を破損した個体が多い⑥現代の小型犬では頭蓋の矢状稜は発達⑦下顎骨は厚い⑧四肢骨は頑丈で太い、縄文人は犬が持つ優れた脚力や視力,嗅覚、嚙む力に気づいていました。

原始的な特徴を残したイヌー福島県三貫地貝塚は縄文後期の遺跡、犬骨を記載した直良信夫によると、イヌは2体で、埋葬犬の上に人間の頭大の石が乗せられた

歯を失ったイヌー千葉県境貝塚は縄文後期前半の遺跡、イヌの頭骨は、八本も歯を失った縄文犬、高齢、戸村正巳が発見採集、本来は1体分が揃った埋葬犬でした

現代の小型犬に似たイヌー青森県二ッ森貝塚で発掘した埋葬犬骨で、半裁した第2号フラスコ状土坑の床上から出土

人とイヌとイノシシが埋葬ー千葉県白井大宮台貝塚で行った確認調査で、1つの土坑から人とイヌと幼猪の埋葬骨が出土

住居の炉の下に埋葬ー千葉県栗ヶ沢貝塚で発掘した埋葬犬骨で、犬骨が発見されたのは、貝塚の下位から検出した第1号竪穴住居炉址の下にある土壙6の底部

住居跡に埋葬されたイヌとイノシシー千葉県有吉南貝塚の378号竪穴住居跡から2体の埋葬犬骨と1体の幼猪埋葬骨出土

国内最古の埋葬されたイヌー愛知県上黒岩陰遺跡の発掘では洞窟内の遺跡堆積物は14の層に分類、Ⅳ層から大小2体の埋葬犬骨発見

縄文犬の用途

縄文時代の狩りの謎は、縄文貝塚から出土した鹿や猪の骨からかなり大きい、どうやって大物を仕留めたか、現代のイノシシ猟は、乙種(銃猟)、甲種(罠猟)、自由猟があり、乙種猟は吠え留め猟と巻狩がある、罠猟は待ち受けタイプの落とし穴や罠は設置に時間と労力必要、吠え留め猟は2・3人で組み、仕込み犬数頭で行う。縄文時代中後期石鏃を射こまれたイノシシの肋骨や脊椎骨のほかに、脳天や眉間に受けた重度の打撃傷や治癒した痕跡のあるイノシシ頭骨が出土し、縄文犬の60%が前歯部のいずれかの歯を喪失したり、破折したりしている。イノシシ猟にイヌを使う狩猟法は縄文中期以降北を除き広まった。

房総の陥穴状土壙は縄文早期を中心に多く発見され、犬の骨が報告ないことから罠猟主体であったと考えられる。房総でイヌを使う猟が遅れたのは罠猟で十分の肉が得られたため。犬を使った吠え留め猟は、イノシシ遺存体にイヌによる嚙みつき痕が確認できた、オス・メス比は1対1、猟期は11月から約4か月、年齢別で頻度が高いのが1・5歳獣で3・5歳獣が続く、狩猟頭数は年間で2頭から3頭となる、縄文人はイヌに海産魚と動植物食料を与えていた、縄文人のシカ猟は、イノシシほど攻撃的ではないので巻狩や罠・落とし穴・弓矢を使った待ち射などおこなわれた

中国の場合、最古の埋葬犬骨はジアフイシから多数発見、磁山イシ出土345基中5基の土坑部にブタ埋葬、長方形抗の底部に1体のイヌ、中国最古のイヌの犠牲例と考えられる、縄文時代中期後半の二ッ森貝塚と白井大宮台貝塚の埋葬犬は、ヤンシャオ文化の共通点があることから供儀や殉葬とするのが自然でしょう、

切断加工のあるイヌの右下顎骨は、竪穴住居跡で1号人骨(屈葬状態)のそばから出土、骨製品の中に哺乳類の下顎骨を切断加工した製品があることは古くから知られ、目的は強大な力を呪術的に体得することにあった、加工品は親密な関係にあるイヌがいたことを示しています。

賀曽利貝塚のイヌの右脛骨標本は解体痕がある、カットマークの見られるイヌの骨の出土例は4例にとどまっている、広島の草戸千軒町遺跡からおびただしい犬の骨、刃物の傷や火にあぶられた痕跡、煮込まれた痕跡が見られたが、食用にしたとは判断はできない

まとめ

大陸から渡来したイヌと縄文人とのつきあいは長い、出土状況から暮らしを復元、神の生贄をはじめ縄文人との関係を探ります