本書は華南の移住と民族について考察したもの、著者は東京大学大学院修了・文学博士、国際基督教大学教授、
動き出した人々ー福建・広東の移民活動
①福建と広東ー華人のふるさと、広東語と華人世界、元フロンティア・福建、広東・珠江デルタ地域の開発、諸言語集団の形成、フィリピン・琉球・長崎の福建移民、潮州人のタイ入植、広東人と広東語、広東人の由来伝説、専制王朝の支配に抗して、客家と客家語、客家人の移住伝承、「他者化」された後発移民＝客家、②中国の人口爆発と移民活動、18世紀中国の人口爆発、相続制度からみる日中人口比較、人口過剰に苦しんだ福建・海へ乗り出した人々、移民たちの証言から、中国王朝の禁圧策と交易の拡大、
越境する漢人移民ー広西と台湾への入植
①瘴気の地・広西、残された特異な習慣・屈葬、清代中国の移住動向、広西ー瘴気と先住民族の地、山水画のような風景と貧困、三つに分かれた社会、広東の後背地として、広東文化への憧れ、②台湾・うるわしの島、多様な民族と複雑な住民構成、台湾人の誕生と彷徨、③移民の要因とネットワーク、移住の政治的要因、中国王朝の政策移民、「明朝への忠誠」というフィクション、重宝がられた中国系移民、同郷ネットワークと会館、開墾をめぐる共同関係、現地での婚姻と養子、④「搵食」という行動様式、成功のチャンスを広げる活動、ある客家移民の例、王朝政府の「搵食」批判、台湾のパイオニアファミリー・霧峰林家、武力抗争の械閥と反乱の中で、
辺境の科挙熱ー中国文明と向き合う
①土司の周辺民族統治と改土帰流、発覚した科挙不正受験、「土司」とは何か・世襲官吏、土司の権力基盤と寨老、漢文化受容の努力、「改土帰流」とは土司の廃止、雍正帝の「華夷」観、「西北」と「西南」のダブルスタンダード、流民統治の実態、土目たちの抵抗、②辺境での科挙受験と儒教、広西チワン族の民族文化、清朝の習俗改変策、生員のボーナス定員枠、辺境ゆえの科挙熱、③あるチワン族一家の「漢化」、西林県岑氏にとっての漢文化、エリートをめざした長男、「漢化」という生き残り戦略、
周辺民族の抵抗と漢化ー流入する移民と秘密結社」
①創り出された周辺民族の「貧困」、だまされたチワン族、口火を切った商業移民、移動する山地民・ヤオ族、ある地方官のヤオ族定住策、「封じ込め」政策とヤオ族の貧困、流入する移民と天地会、侵食する下層移民、趙金儱のヤオ族反乱、四川大涼山イ族の場合、訴え出た土司の一族、②「漢人化」する周辺民族、耕地を失うチワン族、チワン族の抵抗、出自を隠すチワン族、漢人の上昇戦略を学ぶ、漢人エリートの裏切り、天地会に加わるチワン族、清蓮教の拡大とヤオ族、ユートピアと漢人的な「価値」、③台湾原住民の世界と日本の統治、「番社風采図」にみる原住民、宣教師たちの医療伝道、「人食い人種」というまなざし、霧社事件／セデック族蜂起と高砂義勇兵、
太平天国を生んだ村でー移民社会のリーダーたち
①移民宗族の台頭と競争、屈辱を受けた韋昌輝親子・武装蜂起準備、金田の開発と有力移民、望まれたリーダーの資質、有力宗族による地域支配、村を調査する醍醐味、没落する初期集団、②新興エリートの「自治」、古程村黄氏の入植と挫折、没落回避の戦略、婚姻が果たした役割、黄体正の登場、安良約と社会統合・亀裂を抱えた秩序、太平天国の発生と安良約、③下位集団の上昇戦略ー造反か・「軍功」か、太平天国に加わった胡以晄の場合、「搵食」としての造反、革命の敵と呼ばれて、先人の遺業を継承する、
械闘と動乱の時代ーつくり直される境界
①広西の来土械闘、多民族社会に起きた抗争、北上する移民集団・太平天国、実力行使の風潮、貴県の先住諸民族と客家、地域リーダーの不在、械闘の発生と拡大、分断の内容、引き直された境界、母親の親族と争った石達開、②広東の械闘、13年にわたる争い、ここでも科挙をめぐって、民間武装組織と王朝政府、反逆者の烙印、分断という解決策、カトリックと世界遺産③台湾の械闘、格差社会の底辺、械闘と反乱の発生、反乱の拡大とその特徴、分類械闘と原住民、マージナルな「番割」／非合法な商人、科挙合格者の苦悩、「義民」の行動を再演する、
越境してやまない人々ー海外移住と新たな統合
①動乱が生んだ移民ーアメリカ・日本・台湾、太平天国の敗北、アメリカ大陸への出稼ぎ、移民たちの供述、中国人移民への反発、マリア・ルス号事件・中国人の虐待と横浜華僑、移民知識人と革命、日本による台湾統治、後藤新平と新渡戸稲造、日本による台湾社会の統合、霧峰林家と台湾の「近代」、終わらない台湾の社会統合、辺境の近代化事業と儒教文明、華南移民史と中国の未来、変動してやまない中国社会、移動変化・競争への情熱、南からと見た現代中国、太平天国と孫文にとっての「越境」、自由な生存空間の希求、
まとめ
①動き出した人々、②越境する漢人移民③辺境の科挙熱④周辺民族の抵抗と漢文化⑤太平天国を生んだ村で⑥械闘と動乱の時代⑦越境してやまない人々、福建・広東の移動、越境する漢人移民、周辺民族の抵抗と漢文化、太平天国を生んだ村から海外移住まで展開し華南の越境史を描いている、
