本書は美術的な仏像鑑賞が近代以降に定着していく経緯を、宗教的アプローチで考察し論じたものです、著者は慶応義塾大学院博士課程取得、龍谷大学アジア仏教文化研究センター博士研究員、
仏像巡りの基層
1寺院とは何かー寺院の始まりは僧侶の暮らしの場、日本の寺院は信仰と権力集中の空間、仏像重視、2前近代の古寺巡礼ー巡礼の歴史、江戸時代の巡礼の隆盛、巡礼文化の今昔・古寺巡礼、、3江戸の開帳ー資金獲得のため、開帳を巡る文化
日本美術史の構築と仏教ー明治期
1廃仏毀釈と文化財ー廃仏棄却がもたらしたもの、文化財保護の始まり、博物館の誕生、古社寺ほぞんほうと「国宝」、2フェノロサ・岡倉天心・小川一真⁻美術概念と日本美術史、フェノロサの美術感、岡倉天心の日本美術史、岡倉の古社寺調査、小川一真の仏像写真、3博物館と寺院ー仏像鑑賞の形成、博覧会と社寺、宝物館の創設、美術書による布教活動、美術と文化財と仏教
教養と古寺巡礼ー大正期
1古美術を巡る風習ー仏教巡りのバイブル「古寺巡礼」、会津八一と奈良の古美術、古美術ガイドブックの刊行、奈良の宿・日吉館、奈良の写真館・飛鳥園、2和辻哲郎の「古寺巡礼」ー「古寺巡礼以前」以前の薬師寺聖観音像、宗教と芸術を区別、官能的な仏像、宗教への接近、日本文化論としての「古寺巡礼」、3教養としての仏像ー教養の一種として受容、木下杢太郎との論争、保田輿重郎の和辻批判、
戦時下の宗教復活ー昭和戦前期
1危機の時代の仏像ー戦争と古美術「日本精神」論、実在的な仏像巡り・出征を前に、「古寺巡礼」の受難・白眼視、古寺の破滅の可能性、2美術の拒絶ー亀井勝一郎、「大和古寺風物詩」への道、美術鑑賞への批判、博物館の疑念、戦時下の祈り、3秘仏を巡る心性ー高村光太郎ー仏教復興とフェノロサ批判、高村光太郎の秘仏論・夢殿の救世観音、美術と宗教の政治利用、戦時下の高村光太郎は政治利用に意欲的、美の宗教性、
仏像写真の時代ー昭和戦後期①
1資料・美術‣教化ー仏教写真の世俗性、仏教写真の変遷・資料と美術、工藤利三郎と仏像写真家の自立、戦時下の仏像写真で小川晴暘は政治と心の拠り所、美術史研究と仏像写真で町田は小川を批判し坂本万七を評価、古美術鑑賞のモデル「日本の彫刻」写真集、2古寺「写真」巡礼-土門拳と入江泰吉ー土門拳と室生寺の情景、入江泰吉と敗戦からの出発、被写体と魂の交感、祖先の心を写す、仏像写真家の宗教性、霊媒としての写真家、3礼拝と展示のあいだー礼拝的価値から展示的価値へ、展示的価値は仏像写真から、礼拝と展示の反転、仏像写真の礼拝性は土門拳と入江泰吉、
観光と宗教の交錯⁻昭和戦後期②
1古寺と仏像の観光化ー京都の観光化をめぐって松田道雄の妥当な見識、古美術観光の隆盛、仏教鑑賞の大衆化、古都と「ディスカバージャパン」、東海道新幹線をめぐって、2信じることと歩くことー白洲雅子ー西国三十三観音巡礼への挑戦、十一面観音巡礼への展開、身体性の重視、歩く速度で考える、3古都税を巡る闘争ー古都税問題発生、寺院の拝観停止、対立する主張、観光の支配性、
仏像巡りの現在
1仏像ブームと「見仏記」ー阿修羅展と女性の活躍・田中ひろみ、いとうせいこう×みうらじゅん「見仏記」と和辻哲郎、対話式の古寺巡礼、みうらじゅんと仏像ブームの起源は寺院のの拓本をとる趣味、2美と宗教のゆくえー博物館の主導権、鑑賞から信仰へ、観光・美術・宗教
まとめ
仏像について書こうと思い立ったのは奈良博見学後古寺巡礼で、「そうだ、仏像の本を書いてみよう」、奈良と京都を中心に仏像巡りして準備を進め、中央公論上林さんと落とし込み具体化したものです、