社会学的研究テーマと個人的関心から建築家を執筆、建築家とは誰だで・ブルデュー理論「ハビトウス」と「界」を用いています、「建築家の解体」に込めた意図はサクセスストーリーの解体と新しい建築家像の立ち上げにあります。著者は関西学院大学准教授、専攻は労働社会学
建築家とは何か
社会学で建築家を理解する
ブルデューの理論で芸能人と芸能界を例示、芸能界から下位分化したのが界、芸人とお笑い界との闘争、M-1は若手台頭と年長者保護の役割、芸人の資本は受賞歴と「ハビルトゥス」吉本総合芸能学院、資本の四つの類型・経済資本・象徴資本・社会資本。文化資本
建築家界という界について
建築家界は目的や賭け金に価値を信じ・それを目指して競争に意味があると信念を持つ、建築家界の排他的境界、建築家界に入るには、メンバーに求める基準や規範
建築家のハビトゥス
大学が重要な場所、学生は建造物を建築と建物に峻別、この先卓越した建築家になるには賭け金としての作品を用意する、安藤忠雄のデビュー作「住吉の長屋」・建築家としてのハビトゥスを身に着け・新進気鋭の建築家の評価を得る、
建築家をつくる大学教育
大学の建築教育は実用的なのか
大学での潜在的教育効果、大学教育の意味はハビトゥス、
基礎教育を通したハビトゥスの体得
建物評価で押しつけと見なされない教育の仕組み、筆者の経験からクライアントあっての建築家・スケッチブック携帯で審美眼を養う・別荘を設計、「支配的ハビトゥス」の体得、
講評会という教育装置
徒弟制的教授法のから講評会へ、講評会という教育機関、講評会という場のもつ意味は学生側が受信する構えの形成、教え込みの失敗はある、
建築家らしさとは
大学で身に着けた支配的ハビトゥス、建築界のサポーターとしての役割、足かせになるハビトゥス、有効に働くのは建築界の中だけ
安藤忠雄の伝説を解く
サクセスストーリーの裏側、差別化の戦略・独学で建築を学ぶ・世界旅行、資本と賭け金では・アルバイトで社会資本をつくり・集大成として「住吉の長屋」
建築家と住宅
賭け金としての住宅
隅研吾のパドックからカラオケへは住宅設計がパドック、住宅の神格化・学歴に代わるもの、戦後の住宅史は①公的住宅供給②住宅の工業化③個別住宅設計、小住宅の名作「斎助教授の家」「浦邸」「スカイハウス」
住宅産業の誕生と建築家
冷めていく住宅への熱・一般的住宅に無力、住宅産業の成長・大和ハウスや積水化学
住宅における建築家の役割は終わったのか
住宅という食い扶持は建築家予備軍の増加による、篠原の「住宅は芸術である」は閉じられた世界で表現の可能性、篠原一男の影響・伊藤豊雄、都市に豊かに住まうという主題で、安藤忠雄の解答は都市に住みつく人々の意志
過激化する住宅作品
野武士の世代は1940年代生まれの建築家、野武士世代の住宅作品・六角鬼丈「家相の家」毛綱毅宏曠「反住器」、石山修武の「幻庵」、伊藤豊雄の「アルミの家」、安藤忠雄の「住吉の長屋」、突き動かしたパドックの論理、隅研吾・社会の本質との関係で警告
後期近代と建築家の変容
後期近代とはどのような時代か
本レースの消失は万博と二つの震災、建築におけるポストモダン、後期近代の脱埋め込み、ニュータウン
ハコモノ化する建築
場所は個人のアイデンティティに紐付けられ、空間はショッピングモール、空間つくりに建築家招聘されない、ハコモノの登場、バブル崩壊で建築敵視の風潮、
1970年ー大阪万博とシンボルの転換
お祭り広場と太陽の塔は、機能とシンボルの分離、オウム真理教のサティアンは粗末なバラック
1995年ー阪神・淡路大震災と建築家
建築家の無力感、復興後の景観の違和感、坂茂は震災後の鷹取教会を紙で建築
東日本大震災と建築家
伊藤豊雄のジレンマ・建築家が呼ばれない「みんなの家」完成で被災地の場所つくり、建築家303人の復興支援ネットワーク「アーキエイド」活動、坂や伊藤は「顔の見える」専門家として「場所」を取り戻すため参加
隅研吾ー後期近代的建築家像
プロローグ、隅は東大大学院を経て大手建設会社勤務、1980年代ー建築画像の模索、批評家として出発「10宅論」「グッドバイ・ポストモダン」、M2本社ビルの設計、1990年代ー反オブジェクトと地方で今治の「亀老山」展望台設置と、高知の梼原町地域交流施設、那珂川町馬頭広重美術館建設と石の美術館竣工、地方で資本蓄積、「2000年代以降ー新しい有機的建築の追求で手法の変化「謙虚な生命観に基づいた新しい有機的建築」
建築家の解体と街場の建築家
解体される建築家の職能
日本には建築家として卓越化していくためのリソースが残っていない、建築家のフロンティア「空き家時代」、建築家の解体で代表的なリノベーション、建築に関わる職能の総体を建築家、
起業家としての建築家-谷尻誠
異質の存在・漫画家からデザイナー、リスクある独立、友人を伝手に仕事獲得、オープンハウス見学会に来てくれた人で「毘沙門の家」完成
建てない建築家の登場
山崎亮は大阪府大農学部卒、山崎はコミュニティデザイナーの職能で建てない建築家、鹿児島の「マルヤガーデンズ」のプロジェクト、場所をつくる「顔の見える専門家」
街場の建築家たち
ボトムアップ型のまちづくりは、空き家をリノベーションして何かやる、神戸塩屋の成功例「場所つくり」は建築家の役割・街場の建築家、パイオニアは大島芳彦・山崎亮・嶋田洋平・西田司・藤村龍至、街場の建築家のリアリティは建築界から一定の距離を置くこと
専門家のゆくえ
石山修武の慧眼・住宅は住民が作れるもの、素人・玄人関係なく万人が使用可能なものになりつつある
まとめ
本書は社会学者による建築家の解題という試みを、より広い読者向けに執筆したものです、建築家とはなにか、建築家をつくる大学教育、安藤忠雄、建築家と住宅、後期近代と建築家の変容、隅研吾、建築家の解体と街場建築家までを解説しています