飢餓が顕在化したアフリカに関心もち、アフリカ調査、ソマリアに関心、アフリカに迷い込むと毒が回り再び戻りたくなる、本書はアフリカ地域研究入門書として企画、若手研究者に集まってもらったものです、編者の遠藤貢は東京大学院教授、比較政治・国際政治、阪本拓人は東京大学院教授、国際関係論・アフリカ研究‣計量社会学
地理と自然ー藤岡悠一郎
1アフリカの多様な景観、アフリカの地理ー砂漠と熱帯雨林と山岳、地面と衛星画像でみるアフリカの景観ー中央に森林・南北砂漠とサバンナ、東の高まりと溝、
2アフリカ大陸の成り立ちと景観、大地に刻まれた数億年の歴史ー南東部が高く北西部が低い・東断層、変動する気候と植生ー熱帯収束帯の滞留する赤道は熱帯雨林・南北にサバンナ・東の断層はサバンナ、気候変動と人類の進化ー東の大地溝帯、
3生物多様性と人為生態系、アフリカの多様な生物ー哺乳類と東の魚類、人間活動が織りなす景観ー人為生態系は都市部の拡大・焼畑・牧畜、
4景観の持続性と課題ーホットスポットの指定と保護
人々と生活ー佐川徹
1二つの多様性ー静的多様性と動的多様性
2移動と交流がもたらす多様性と連続性、土地豊富社会でフロンティア人、移動を常態とする価値観ー社会関係ネットワーク、
3生業、社会関係、言語の動態、多様な生業と生活の自立性ー自然利用のジェネラリスト、民俗境界を越えた社会関係と政治秩序ー政府のない社会存在、都市の多言語状況がもたらす創造性ー文化創造の主たる舞台、
4分断統治を超える生活の営みー移動や交流を通じて日々の生活実践
人々の世界観ー橋本栄莉
1秩序への意志、世界観とはー常にひらかれ様々な要素を巻き込み展開する知のあり方、笑われたお守りー伝統信仰は「遅れ」の象徴か、信仰と発展をめぐる理解と誤解ー植民地統治を正当化
2世界を分割し、把握する、サブサハラ・アフリカの世界観の諸要素ー狩猟採集は守護霊・牧畜は天空神話・農耕は農耕儀礼、時間の概念・南スーダンーそれぞれの月にどのようなことが起き・何をしなければいけないか・牛の供儀と肉の共食、神話ー超人間的な力からの分離が災いをもたらす、呪術の基礎にあるのは不条理といった人間が生きてゆくうえで避けて通れない困難である、
3信念のダイナミックス、信仰の混淆ーイスラームは7世紀・キリスト教は6世紀からアフリカ独自の発展・植民地政府の抵抗運動は再生された新しい伝統、妖術信仰のその後ー植民地統治と開発ー妖術信仰を活性化、紛争・難民と神話ー「民族」の創造ー神話は故郷を失った人々が共通の体験を乗り越え結びつき・新たな民族アイデンティティを得る、
4アフリカの「民衆の認識論」からの問いー森に迷いこんだ時、アフリカの「民衆の認識論」は処方箋やお守りを与えてくれるかもしれない、
独立前の歴史ー中尾世治
1独立前のアフリカ史の全体像ーアフリカは、イスラーム世界や欧米の環大西洋世界と連携しながら発展したダイナミックな歴史を持つ、
2社会の複合化と異なる社会の併存、狩猟採集と牧畜・農耕ー牧畜が農耕より先行、移動と開拓ーバンツー系諸民族は西から東・南へ移動し農牧民と関係構築、交易と国家ー長距離交易から国家が生じた、
3大西洋奴隷貿易と広域の移動、大西洋奴隷貿易の衝撃ー国家形成と経済後退、環大西洋世界の出現ー食物と音楽がアメリカへ、イスラーム世界の広域な運動ーオマーン王国が東アフリカ支配・西アフリカはイスラーム国家建設、
4植民地統治の成立と第一次世界大戦、征服と植民地状況ーヨーロッパによるアフリカ内陸侵攻と在来政治権力の保持、第一次世界大戦と国際的な統治体制ー大戦がアフリカ内陸の農村反乱を引き起こし・グローバルなネットワークが第二次大戦以前に確立
独立後の歴史ー阪本拓人
1アフリカにおける脱植民地化、脱植民地化とその意味ー主権国家となる過程、権利による独立ー2度の大戦を経て植民地列強は帝国維持の力を失い、アフリカの植民地支配に抗する強い意志から大挙独立、痛みのない脱植民地化ーストライキ、デモ、武装
2国家建設の苦悩、コンゴ動乱ー暴動を経てベルギー国王独立容認・暴動とベルギー軍事介入で全面紛争・モブツのクーデターで完全掌握、政治体制その変容ー政治基盤の脆弱性と強権化、経済構造と開発ー植民地経済構造打破できず・巨額の対外債務、
3冷戦期のアフリカの国際関係、パン・アフリカニズムのその後ーアフリカ統一機構設立で国家建設に専念、域外諸国の関与と支援ー旧宗主国とのつながりと拒否、
4アフリカ国家の危機、国家の永続的危機ー債務の累積と個人統治、冷戦後の世界へー米国やソ連の支援や要請拒否
国家と政治ー遠藤貢
1アフリカにおける独立後国家形成の背景、植民地統治の影響と部族の創造、マムダニの植民地国家論と政治的部族主義ー都市部の集権化と農村部の分権専制化、エケーの二つの公共領域論とその帰結ー原始的公共領域と公民的公共領域から新家産主義・汚職
2紛争と国家変容、アフリカにおける武力紛争と紛争対応ーその変容と傾向ー政治エリートの蓄財と暴力選挙、失敗国家概念をめぐってー①暴力の持続性②暴力が経済活動と連動③暴力が正当化
3政治体制変容と民主主義の後退、アフリカにおける民主化ー停滞、アフリカにおける政治制度ー新家産主義体制、アフリカにおける政治体制の現状ーエチオピアとルアンダの権威的一党体制と地政学から欧米が援助、新自由主義的権威主義と評価手続きとして民主主義の再定義化、
4ハイブリッド・ガバナンスの諸相ー交錯する制度ーフォーマルとインフォーマルな制度の交錯、
経済と開発ー出町一恵
1植民地型経済の遺産、一次品輸出への依存ー経済構造が変わらない、資源価格と経済成長ー世界経済の動向が直接影響、揺れ動く財政ー長期的投資計画が立てられない
2発展=工業化の失敗、製造業の停滞、軽視された農業開発、機を逸したアフリカの緑の革命ー構造調整プログラムを実施した国々は、政府支出削減で肥料補助金廃止・高収入作物は主食でない・灌漑整備されない
3経済と社会の制度、所有権を持たない農民・投資は短期的、コーポラティブの経済社会、制度の脆弱性による脱漏ー脱税、汚職
4債務問題、重債務貧困国と債務免除、国際金融市場へのデビューと新たな債務ー債務免除後にユーロ債発行、新たな貸し手とこれからのアフリカ経済ー中国は異なる理念と手法で貸付、
越境する人々ー松本尚之
1アフリカの都市化と出稼ぎ移民、アフリカにおける移動の歴史ー遙か昔から、都市に暮らす移民たちの生活戦略ー一時逗留者で余生は故郷・「自発的結社」設立、移民たちと故郷のつながりー成功を収めた移民たちが支援
2アフリカのグローバル化と国際移民、アフリカにおける国際移動と移動の多様化ー大陸内移動・ヨーロッパ、移動の女性化ー家族呼寄せと業種の多様化、強制移動をめぐる問題ー難民、オンライン空間へと広がるアフリカ社会ー在米エトルリア人「ディアスポラ」が立ち上げたオンラインコミュニティ
3アフリカの移動と私たちーBLM運動の広がり、日本における正規資格を持つアフリカ出身者は0・7%、
感染症ー玉井隆
1アフリカと感染症、巨大な実験場ー発言者の謝罪、感染症は伝播、
2感染症対応の変遷、植民地期ーアフリカ史上最も不健康な時代、開発の時代ー①マラリア根絶②プライマリ・ヘルス・ケア「すべての人に健康を」③構造調整プログラムによる負の影響
3グローバル・ヘルスと感染症、マラリアの再対策と「世界エイズ・結核・マラリア基金」、HIV/AIDSの治療にアクセス出来なかった原因は高額の治療薬、ドーハ宣言で大きく前進、
4感染症の経験、ナイジェリアの人々と国際社会が協力して作ったポリオ・インストラクチャは、ヘルスワーカーがワクチン接種で一軒ずつ回り健康相談に乗る、得られた情報は連邦政府に集約、エボラウイルス病終結後「アフリカ疾病予防管理センター」設置、アフリカは感染症対策の主役になれるのかーNGO賛同「新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に」
教育ー有井晴香
1学校教育の、アフリカの教育ー外来でエリート養成、教育機会の拡大ー2015年持続可能な開発目標で生涯学習まで目標、
2教育の格差、ジェンダーと教育ー女子教育の推進・西欧的ジェンダー規範・男子の劣位、貧困と教育ー結果的に貧困再生産、障害と教育ーインクルーシブ教育と周囲への適応、難民の教育ー初等教育中心、
3学校教育がもたらすもの、生業活動と学校ー地域社会に合わせた運営、教育による差異化ー学歴差異、教育と雇用ーガーナの職業訓練教育機関はインフォーマルセンターへの就業想定
4これからのアフリカの教育ー教育格差が深刻化
社会的包摂と排除ー仲尾友由紀恵
1アフリカにおける排除、アフリカの牧歌的地域社会のイメージーは英仏のアフリカ分割で形成、社会的排除の三つのメカニズム①政治・行政構造②労働市場③「異常性」、
2労働市場における排除、若者ー構造調整で民営化・社会保障のある雇用枠減少・不安定な立場、高齢者/老人ー若者の弱者性と重なる、身体障碍者ー国境におけるニッチの労働世界
3異常への恐怖心に因る排除、ハンセン病罹患者ー隔離、先天的な異常性・異常な振舞いー隔離収容施設、性的マイノリティ社会運動、
4排除への向き合い方、根絶へと真っすぐに駆け出す前にー背景を考える、歴史に学び・多様な包摂のあり方を学ぶことが肝要
国際関係ー坂本拓人
1アフリカの国家と国際関係、国際関係論におけるアフリカー周辺的扱いと排他的領域統治の欠如、内と外の不可分ーフォーマルな主権国家は様々な資源を統治者にもたらす、
2国境をまたぐ対立と協調、アフリカ国家の危機と国際関係ー失敗国家と脱国家的同盟、大湖地域とアフリカ大戦ーモブツ放逐後、カビラが統治者、第一次と第二次コンゴ戦争に近隣諸国介入、カビラ暗殺で息子が跡を継いだが不安定
3地域機構と地域協調、アフリカ問題のアフリカによる解決ーアフリカ連合発足、重層的な地域協調ー準地域機構がひしめく、アフリカにおける地域協調の特徴と限界ー経済統合は進んでいない、
4域外世界とのつながり、伝統的な紐帯のいまー域内で完結せず域外の関わり必要、新興諸国の台頭と進出ー突出した中国、グローバル・ガバナンスが重要、
日本との関わり
120世紀初頭までー直接の交流始まり、戦国時代から江戸時代までー強いられた移動から始まった人的交流ー意図した交流なし、明治期ー次第に高まるアフリカ市場互いへの関心ー中村直吉のアフリカ旅行、大正期から昭和初期ー官民挙げたアフリカ市場開拓ー政府主導のアフリカ進出、
2第二次世界大戦期ーアフリカと日本の意図せざる戦い、幻の東京オリンピックとエチオピアーイタリアの介入、アフリカの敵国となった日本ー戦争捕虜、広島と長崎に落とされた原爆はコンゴのウラン、
320世紀後半ー歪な形で進んだ関係の再構築、
国際社会復帰後の日本とアフリカー関係再開は貿易・繊維や軽工業品輸出から鉱物資源輸入、核廃絶にむけた日本とアフリカの連帯、南アフリカのアパルトヘイトで日本は「名誉白人」で貿易維持に日本人反発、
420世紀末から現在までー新しい関係構築を目指して
開発支援政策の積極的推進ーODA増加、民間ビジネスを中心とした関係構築へ「ナイロビ宣言」、これからの日本とアフリカー新しい関係は人々がお互いの地を訪れ学びあうことができる状況を増やすこと、
まとめ
企画が本格化したのが2020年春、アフリカに関心持つ初学者に分かりやすく伝えるのと牽引役にになる中堅・若手の研究者に執筆を担ってもらうことで、アフリカの社会・歴史と直面する様々なテーマにつき解説しました、