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建築

伝達と変容の日本建築史 野村俊一編 書評

建築に見る、模倣、部分的連鎖、モノと空間、巨大さと利害関係者、取捨選択の権限と合意、伝達を「伝達と変容」にまとめたものです、編者は東北大学院建築学専攻准教授

伝わるかたち

1組物1ー古代建築の組物とその変遷・海野聡

組物と手先、法隆寺西院伽藍の組物と山田寺回廊ー地域性、法隆寺西院伽藍から薬師寺東塔ー組物の変化、薬師寺東塔~唐招提寺金堂~平等院鳳凰堂ー構造強化

2組物2ー中世取捨選択される軒下・野村俊一

南都焼討と重源の建築マネジメント、東大寺南大門とその情報源は中国福建省の建造物、大仏様の取捨選択ー従来技法、特異点としての東大寺鐘楼ー禅宗様、禅宗様の新しいデザインー円覚寺舎利殿、

3蟇股ー伝播とかたどり・是澤紀子

蟇股をかたどる手法から、板蟇股ー伝わる輪郭とその繰形ー東福寺月下門、本蟇股ー彫刻の伝播と展開ー宇治上神社と錦織神社本殿、復元模写と雛形集にみる伝播と流通ー大崎八幡宮本殿と大和絵様伝、

4木鼻ー伝わる繰型・鈴木智大

木鼻の発生、大仏様系木鼻と像鼻ー長弓寺本堂と霊廟建築、禅宗様系木鼻と植物文ー浄光寺薬師堂と鞆渕八幡本殿、

5仏の空間ー密教・浄土の表現と伝播・米澤貴紀

祈りの空間ー密教・曼荼羅空間ー「年中行事絵巻」の「後七日御修法」、心に想い描く祈りの風景ー阿弥陀信仰・浄土の景観ー平等院鳳凰堂、祈りの空間が伝わるー密教と阿弥陀信仰

6障壁画ー世界の表像と格式・赤澤真理

障子壁画ー空間を飾り、意味づけるもの、拡張される障壁画の領域ー絵画で包まれた建築空間出現、中国からの様式の伝来ー唐絵、障壁画の規範と序列の確立ー「江戸城本丸等障壁画」仙台藩に花開いた障壁画の空間ー瑞巌寺本堂障壁画

7座敷飾ー飾りの編成・赤澤真理

家具から造り付けの場所へ、中世絵巻に示された座敷飾のルーツー中世の僧侶の住まい「慕帰絵」・床・棚・付書院がセットになる、階層を超えて拡がる座敷飾りー雛形本「四十棚」

8御所ー追憶される平安宮・加藤悠希

平安宮の衰退と中世の展開、近世における内裏の考証と復古ー高橋宗直の復元図と裏松固ゼ禅の考証復古実現、模造される大極殿ー平安神宮

9神社ー神明造の差異と反復・加藤悠希

伊勢神宮と式年遷宮、神明造の広がり「神道名目類聚抄」、熱田神宮の神明造化

10伽藍ー禅院の伽藍とその変容・野村俊一

禅院の伽藍と「建長寺伽藍指図」、新しい伽藍ー京都と鎌倉に禅院胎動、建長寺は「大栄諸山図」「五山十刹図」を機範に創建、禅宗・律宗への伝播と取捨選択ー「三聖寺伽藍図」、

11大仏殿ー東山大仏殿・豊臣政権の栄華とその記憶・登谷伸宏

豊臣秀吉の大仏殿造営、秀頼による大仏殿の再建、江戸時代の大仏殿ー豊臣氏滅亡後、大仏殿は残った「方広寺大仏惣指図」

12層塔ー層塔建築の系譜・海野聡

巨大建築への憧れ、塔の精神性は心柱と心礎、塔の構法的展開ー柱盤で組み上げた構造、逓減の変遷と踏襲ー層塔型に変化、

13楼閣ー見ることの欲望と制度・野村俊一

見ることの欲望と制度ー金閣と銀閣、金閣・銀閣の階層ごとにデザイン区別、ルーツは禅院の楼閣、伝わる楼閣ー監視

伝えるわざ

14大工道具ー工匠と技術・道具ー海野聡

古建築と工匠ー大工を頂点にピラミッド型、官による道具管理、描かれた中近世の施工現場と大工道具ー「春日権現験記絵」、大工道具ー墨壺と木奥家の大工道具、

15小建築ー小建築の造形・海野聡

さまざまな小建築ー家型埴輪と瓦塔、奈良時代の小建築ー海龍王子五塔と元興寺五重小塔、出土した小建築ー平城宮跡出土建築雛形、

16絵図1ー図法と視点・野村俊一

東福寺伽藍図と上空の視点、建築の画像表現をめぐってー春日社寺曼荼羅と那智参詣曼荼羅、現実と創造のあいだー天橋立図

17絵図2ー信仰と絵解き・米澤貴紀

浄土の世界が伝わるー当麻曼荼羅、聖地の姿が伝わるー三輪社絵図、聖地と信仰が伝わるー伊勢両宮曼荼羅、

18図面1ー建地割図の誕生と指図・野村俊一

「円覚寺仏殿造営図」と幻の建築、指図の表現ー平面や配置を表す「東大寺殿堂図」、建地割図の表情ーいろはの番号と実態を詳細に伝える、混在する記法と大きな図面ー断面図や立面図を適宜混合、

19図面2ー近世の建地割図が果たした役割・鈴木智大

魅せる図面の成立ー増上寺本堂図、多様な縮尺ー善光寺如来堂1/30の縮尺、造営の現場ー職人尽絵、事業計画図としての建地割図ー東大寺大仏殿建地割図、彩色雛形ー徳川霊屋向柱組並彩色絵図、

20図面3ー仙台藩の建築絵図と伝えるわざ・西松秀記

仙台城の建地割図ー仙台城及び江戸上屋敷主要建物姿絵図、建築技術を伝えるー「唯一神道御木作・御釿始・御釿立祭礼秘伝」、大崎八幡宮の修復経過を伝えるー「御修覆帳」

21大工文書ー技術の表現とメディア・米澤貴紀

鎌倉大工のノウハウ共有ー「五間仏殿名目」と「三間仏殿名目」、一族の秘伝の継承ー「木砕之注文」、大工家の矜持を示すものー「匠明」、技術の一般への普及 ー木版本、

22起し絵図ー越し絵図の多彩な形式と機能・中村琢巳

茶人のコレクションー茶室の建築的特徴、大工が描いた起し絵ー「山崎妙喜庵建絵図」、組み立てることと畳むことの両義性ー起し絵の所持、

小論

1日本建築における過去の継承と復古ー加藤悠希

建築のリテラシーと規範性、規範としての宮殿ー模倣、大陸形式の導入と伝統の自覚、有職故実の成立、大仏様・禅宗様と和様、城郭と茶室ー近世の新たな規範、建築における復古、近代建築史学ー洋と和・古建築の文化財制度

2技術伝播・工匠・道具ー海野聡

工匠と技術伝播、情報・技術の精度、工匠と道具・技術、ー日本建築の醸成

3伝統的な図面表現と建築の近世・近代ー中村琢巳

衰退した建築図面の視点から、水平展開する視点ー平屋建て、雛形や寸法という型の衰退、伝承性を体系化させた図面群ー保管性、伝承性は失われた

講演:建築の情報はどのように伝わったかー光井渉

言語と数値による情報伝達ー平安時代に共有、図面による情報伝達1・専門家の世界ー御大工の家系で急速な発展、図面による情報伝達2・社会の中で共有される建築の情報ー江戸期の名所図会、

まとめ

本書は東北歴史博物館「伝わるかたち/伝えるわざー伝達と変容の日本建築展」をもとに日本建築史を叙述、目的は建築情報の伝達と変容と建築資料を再整理し広く紹介することです、起点は東日本大震災で、全国に眠る資料の実態調査を始めることになりました、