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壁と卵

思考と行動の中国史 竹内康浩 書評

この本の目標は、意志をもって行動する人間の可能性と限界、人間が集団として生活して行くうえで何が求められたか、自分が生きている世界はどのような構造になっているかを意識しつつ、各種の材料を拾い上げ構成・叙述するものです。著者は東京大学院博士課程取得、現在、北海道教育大学教授、中国史専攻

皇帝という存在

皇帝の登場

皇帝のイメージ、皇帝号の創始は秦王、皇帝の地位は絶対権力と聖なる存在、国民党は皇帝の生まれ変わり、皇帝は諱と廟号を持つ、悪い諱は煬、悪い諱「霊」を拒否した話

皇帝の働き

天人相関説、こわい女性二人の話・呂后と武則天、敵も認める皇帝の人徳、制度的な反映「天人相関」、皇帝の働きは天地自然に及ぶ

尊貴なる皇帝

名前は「諱」「字」、社交のマナー「辟諱」、皇帝の諱を庶民が使っていいわけない・罰則ありで超人誕生「竺超人」、擡頭の決まり

期待を裏切った皇帝

煬帝でもまだまし、究極の暴君は金の海陵王・完顔亮、中国皇帝は,天と民に介在

暴力的な上流社会

粗暴な人たち

貴族たちのイメージと乱暴な貴族たち、酒のトラブルとギャンブルでのトラブル、れっきとした犯罪は略奪、使用人への乱暴な振舞い、

しつけの体罰

しつけととは鞭打つこと、家訓書「顔氏家訓」に見える「しつけ」体罰、「紅楼夢」の暴力世界、「紅楼夢」の暴力一は親から子への折檻、「紅楼夢」の暴力二は主人から使用人への懲罰、「紅楼夢」の暴力三は使用人への虐待、「顔氏家訓」の主人による虐待と使用人たちの逆襲、しつけは教育的指導

暴力の効用

暴力の効用は教育の手段と意志を実現、暴力礼賛の世情は「水滸伝」、デュボア先生の見解・力関係は暴力により決定、人間観の表れとしての暴力・上下関係

日々の暮らし

農民はとても大変

農民の家計簿は暮らし維持、農民の生活は朝から晩まで肉体労働、いつもどこかで自然災害、ひどかった悪政の害・重税負担、詩人たちによる農民の苦しみを告発、皇帝も知らないわけではないが、目の前の官吏が悪い,弾劾にとどまる、

食事をめぐる人々の絆

民は食をもって天と為す、食べ物の恩一は韓進の話、食べ物の恩二は趙盾の話、食い物の恨み一は・一皿の料理から主君殺し、食い物の恨み二は料理をめぐって戦争の勝敗・恨みと恩で「私は一杯のスープで国を失い一壺の食事で士二人を得た」、もてなし料理で差別待遇、不審を抱かせる、恩は困っている時かどうかが問題、恨みは傷つけたかどうか、食と名誉で食事は、雇用関係と主人の寛大さを示す象徴、人間関係の在り方に食事が大きな役割・韓進、施しを好む劉邦・魯粛、「穿衣吃飯、即人倫物理」は着ること食うこと・それが人としての当たり前の道、「満腹な人と空腹な人は意見が違う」

世界理解の様相

地獄とその教育

世界理解で「立つ位置」確認、「楚辞」招魂編に、さまよう魂に天と地について恐ろしい怪獣たちが待ち受けることを伝える、「正法念処経」の究極の地獄、「往生要集」の地獄の様相、僧侶による地獄教育、経師や唱導師による地獄語りのパフォーマンス、宗教の持つ意味は、世界の構成と立つ位置を示してくれるもの

死者の暮らし

「死者の恩返しは」で死者は現実社会とつながっている、黄泉の国は死後の世界、寿命が縮む悪い行い、お供え物から見る死者の世界は生活に関わるもの、廉価版もあります、地獄の沙汰も子孫次第、死んだ親が立派な人物の場合、地獄へ行くことはない、死後の世界は現世の延長、世界観と人生では、現世にこそ幸福があり,叶わなかった場合死後の世界で実現

まとめ

人生観、社会観、世界観を意識しつつ、皇帝という存在、暴力的な上流社会、日々の暮らし、世界理解の様相につき構成叙述したものです、中国の特質は身分格差、上下関係、現生が何より基本であることです。