日本列島の世界遺産に焦点をあて、原始・古代から近代にいたる日本の歴史文化が世界人類にとって、どのように価値づけられるかの国際的視野から、日本史・日本文化の歩みを照射したもの、編者は佐藤信、東京大学名誉教授、専門は日本古代史
日本の世界遺産を巡る動向-鈴木治平
採択された奈良文書、縄文から近代・創造から生産までをカバー、遺産が人類にとってどのような意味を持つかの観点、
北海道・北東北の縄文遺跡群ー岡田康博
土器の出現と定住・集落と精神文化、水産資源を生かした生活‣精緻で複雑な精神文化・集落と生業・集落形態の変遷、
百舌鳥・古市古墳群ー和田晴吾
傑出した古墳時代の埋葬の伝統と社会政治的構造、古墳とヤマト王権、代表する百舌鳥・古市古墳群、日本独特の前方後円墳、埴輪、古墳と社会の統合
宗像・沖ノ島と関連遺産群ー佐藤信
宗像・沖ノ島の構成資産と沖ノ島の祭祀遺跡、国家的祭祀と宗像氏との連携、神郡・宗像郡
法隆寺地域の仏教建造物ー建石轍
世界最古の木造建造物・古代からの信仰の場、境内紹介、信仰・建築・美術の源流、奈良文書
古都奈良の文化財-立石堅志
平城京を母体・平城京跡、東大寺、興福寺、春日大社・春日原生林、薬師寺、唐招提寺、元興寺、
古都京都の文化財ー増渕轍
世界遺産一覧表に見る「古都京都の文化財」、平安京造営と遺産群ー王城護持の神と仏、都市構造の変容と遺産群-浄土信仰の発展と造形文化、中世京都の文化と歴史遺産ー禅宗と庭園文化、近世における復興と歴史遺産、京都の世界遺産の課題
紀伊山地の霊場と参詣道ー本中眞
資産の概要と世界文化遺産としての価値、修験道・神道・真言密教の霊場と参詣道の形成、仏教‣神道の融合から生まれた修験道、貴賤を問わず階層をを超えて浸透した信仰、社殿‣仏堂の見本とその形成の背景を成した信仰の山の景観、生きている信仰・宗教文化の伝統との直接的な関連性、他の日本の世界文化遺産との関係、三県に及ぶ範囲、信仰を軸とするシリアル資産
富士山ー信仰の対象と芸術の源泉ー稲葉信子
自然遺産から始まる、自然と文化の境界を埋める、評価基準ー自然美、文化遺産としての価値、象徴
厳島神社-西別府元日
厳島神社へ渡る、人の世の神‣伊都岐島神の登場と転嫁、佐伯景弘と平清盛・平頼盛、厳島神社の定立と神仏混合、世界遺産・厳島神社の継承
平泉ー及川司
平泉と世界遺産、浄土庭園、北へのまなざし、南へのまなざし、中尊寺建立、都市の形、政治行政上の拠点、京風と在地風
琉球王朝のグスク及び関連遺産群ー當眞嗣
琉球史とグスク、今帰仁城跡、座間味城跡、中城城跡、勝連城跡、首里城跡、玉陵、園比屋武御嶽石門、斎条御嶽、識名園
石見銀山遺跡とその文化的景観ー村井章介
世界遺産に価する「文化的景観」とその構成要素、代表的な調査・発掘事例から、銀山発見から灰吹き法導入まで、山陰~朝鮮間の倭人ネットワーク、銀を飲み込む中国、近世国家による生産力編成とシルバーラッシュ
姫路城ー西和彦
姫路城の成立、姫路城内外の構成、近代の姫路城とその修理、知られざる姫路城の解明、世界遺産としての姫路城
日光の社寺ー江田郁夫
日光の起源、世界遺産としての日光、日本の総鎮守へ、神仏習合の霊場、日光山と宇都宮大神宮、徳川家康と日光山
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産ー木村直樹
潜伏キリシタンの物語としての世界遺産、アジアの文脈から見た日本布教と教会組織、日本での定着ー豊後から長崎へ、禁教政策の展開、潜伏・異教・キリシタン禁制と世界
白川郷・五箇山の合掌造り集落ー藤井恵介
飛騨の深山の集落ー白川郷と五箇山、合掌造りの特徴、過疎化・電源開発と合掌造り農家の消滅、伝統的建造物保存地区から世界遺へ、世界遺産以後
富岡製糸場と絹産業遺産群ー鈴木淳
近代日本における養蚕・製糸、富岡製糸場の建設と遺産、富岡製糸場の役割、払下げ後の富岡製糸場、養蚕技術の改良と田島弥平・高山社、荒船風穴と富岡製糸場
明治日本の産業革命遺産-岡田保良
基本資料と遺産全体のネーミング、遺産の価値と構成資産の曲折、稼働資産の取り込みと文化庁離れ、「明治日本」と「産業革命」と、シリアル型の構造ー構成資産全体の価値に果たす役割・三段階、「明治日本の産業革命遺産」の登録を振り返る
原爆ドームー藤井恵介
第二次世界大戦と広島原爆投下、広島産業奨励館の被爆、旧産業奨励館残骸から原爆ドームー丹下健三の平和記念公園コンペティション案、原爆ドームの保存修理、世界遺産の登録へ、今後の維持は可能か、その後の保存と文化財化
まとめ
日本の世界遺産の構成資産紹介と、世界遺産の普遍的価値を検証したものとなっています。そのことが重みを加え、日本文化の学び直しに寄与すると思います。