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壁と卵

梶谷懐・高口康太 幸福な監視国家・中国を読む

皆さん監視国家て何だと思います。本書は神戸大学梶谷教授と高口ジャーナリストが幸福な監視国家・中国について執筆したものです

中国はユートピアか、ディストピアか

日本ではハイテク監視国家のイメージが膨らむ状況だが、中国は社会信用は極めて遅れた段階にあるとしている。民間企業による分散処理で、国民は中国の方向に自信を持っている、幸福な状態を求める欲望が、結果として監視と管理を強める

中国IT企業はいかにデータを支配したか

新四大発明、高速鉄道・EC・モバイル決裁・シェアーサイクル登場、①高速鉄道は2008年運行、営業距離は日本の10倍以上、②ECネットでも猛烈なスピード、アリババがアマゾンに勝利したのは「誰から買うか」、ライブコマース(動画でネットショッピング)、共同購入(友人や知人を巻き込んで買う)、社区EC(社区ごとに仲介者を通じて購入)、③モバイル決裁はアリペイとウィーチャットペイが2強、重要な情報を2社で独占、④労働に関するデータはギグエコノミー登場、マイカーを使ってタクシー業務・出前代行・チラシの設計や文章の執筆など案件ごとに受注するクラウドソーシング、シェアーサイクル、今まであった仕事のやり方が効率的・高収入に変わっただけ。中国の消費者はプライバシー保護前提に、個人データの利用を許し、引き換えにサービスを得ることに積極的、ギグエコノミー例として、貨物ドライバーは自営業、満幇集団サービスを使えばスマホを見るだけで仕事が決められる、満幇集団はドライバーを信用評価、融資サービスも行う

中国に出現した「お行儀のいい社会」

深圳市の公積金(住宅積立金)はスマホで完結、監視カメラは2000万台以上、子供の誘拐事件は24時間内で解決、交通違反が減少する、統治テクノロジーが進んだことにより「お行儀のいい社会」になりつつある。香港のデモは「デジタル断ち」で成功。経済成長のためには、信用供与・借金により支出の拡大が欠かせない、風穴を開けた「信用スコア」は点数評価、融資履歴のない人に「百行征信」設立担当、良き行動した人にインセンティブを与える、「失信被執行人リスト」による懲戒は「緩やかな処罰」。地方自治体の「道徳スコア」は大失敗したが新たな都市で採用、温情主義的な政府が制度設計により市民を善導する、

民主化の熱はなぜ消えたか

中国人の場合、検閲回避は代替サービス、中華系サービスが展開、突発事件の場合は徹底的なネット検閲。インターネット時代、新たなメディアやツールが登場したため、政府の検閲体制は後手、香港デモは匿名化アプリ「テレグラム」で運動拡大、宜黄の土地収用事件と烏坎の共有地保証金事件は、ネット輿論に中国政府譲歩。習近平はネット輿論のコントロール、①「反腐敗キャンペーン」②強圧的な封じ込め、③監視員、輿論誘導員の増員と、緩やかな対応①「不可視化の削除」②「ゲーミフィケーション」タスクをクリアするとポイント③「ネット輿論監視システム」特定トピックスの書き込みが増えると警報を出す、習近平政権になって登場した言葉は「ポジティブエネルギー」

現代中国における「公」と「私」

李妌焱は、市民社会の存在が現実的に可能、鈴木賢は党国は聞き分けの良い、利用価値の高い社会組織だけを育成。中国の労働組合「工会」は共産党の手先で、農民工を支えたのがNGOだが幹部が拘束逮捕される、「反腐敗キャンペーン」は、実現される「公共性」が私的利益の外部にある。「政治的権利の平等」を要求する立場が「経済的平等化」を要求する声にかき消される、

幸福な監視国家の行方

「功利主義」を推し進めると監視社会化、監視テクノロジーの進歩は犯罪の予防措置となる。AIが行う功利主義的判断は「道具的合理性」に基づいており、さまざまな社会問題を解決するのに十分ではない。道具的合理性のみに支えられた統治を、メタ合理性をベースにした市民的公共性によって制御していく、儒教的な天理による公共性の追求は、アルゴリズムと結びついて一体化する。中国全体が「規制のサンドボックス」となり、ベンチャーのゆりかごになりつつある、

道具的合理性が暴走するとき

広東省で漢族とウイグル人とで乱闘事件、ウルムチに飛び火・民族間の衝突、当局はテロと断定、対テロ闘争で「監視社会化」が進む。再教育キャンプ建設、収容者は工場に動員され単純労働、民族融和と貧窮削減を名目にウイグル人家族訪問し生体情報収集。抽出された人に「犯罪率が高い」とレッテルを張り、自由を奪う、社会の安定のため仕方ないと正当化。知識人はことごとく拘束、発言できない。王力雄「セレモニー」に独裁政権は政治音痴のエンジニアによって崩壊、テクノロジーによる民主主義は、独裁に勝つ。現代の監視社会化ついて考えることは、テクノロジーをどう使いこなすかである、日中両国が良き隣人であるために

まとめ

中国は幸福を求め、監視は容認、体制を支えるテクノロジー、あらゆる手段でお行儀のいい社会を形成、功利主義を推し進めると監視社会、新疆ウイグル自治区に見る道具的合理性の暴走、テクノロジーをどう使いこなすかが問題、