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地理学

モンスーンの世界 安成哲三 書評

本書はモンスーンのしくみと風土の形成を取り上げ、モンスーンアジア共同体を提唱している、著者は京都大学大学院博士課程修了、京都気候変動適応センター長、総合地球環境学研究所顧問、

変化に富む日本の気候ー季節変化と地域性

①春ー花と新緑の季節、②夏ー長雨と暑さの季節、③秋ー実りと紅葉の季節、④冬ー寒さと大雪の季節、

地球の気候とそのしくみ

①地球気候を決める4つの要素・公転・自転・大気と海洋・海洋と大陸、②地球気候の南北分布と季節性、日射量の南北分布と季節変化、太陽放射と地球放射のちがい、気候の南北分布はどう決まっているか、③大気の南北循環、低緯度での大気循環ーハドレー循環と貿易風、中緯度での大気循環ー蛇行する偏西風・高低気圧と前線、極域での大気循環と極前線、④水惑星地球は気候をどう決めているか、水・水蒸気・雪氷の相変化の複雑な役割、雲ができると雲はさらに発達する―潜熱の働き、水の潜熱が駆動するハドレー循環ー水循環の重要な役割、地球気候を和らげる海洋、⑤大気と海洋の相互作用が創り出す地球気候とその変動、大気と海洋の循環はひとつのつながったシステム、熱帯太平洋上の大気と海洋系ー東西の大きなコントラスト、エルニーニョ/南方振動ENSOと太平洋十年規模振動PDO,⑥テレコネクションと気候変動、テレコネクションとはなにか、ラニーニャが引き起こす日本の暑い夏・エルニーニョが引き起こすカナダの暖冬やフロリダの寒波、

アジアモンスーンー地球気候における重要な役割

①夏のアジアモンスーンー大気と水の巨大な循環、海陸分布が大きく変える北半球の大気大循環、アジアモンスーンーユーラシア大陸とインド洋が作り出した巨大な大気循環、②ヒマラヤ・チベット高原の大きな役割、大気を強く暖めるチベット高原、海洋からの水蒸気がモンスーンを強化する、③東アジアにおける梅雨前線の形成、季節進行における気団のせめぎあい、チベット高原の風下側で乾湿が合流、④アジアモンスーンと砂漠気候はワンセット、モンスーン気候から砂漠気候へ劇的な変化、チベット高原の東西における非対称な気候・東西の非対称な気候形成のしくみ、熱帯偏東風ジェット、⑤冬のアジアモンスーン、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧、東アジア特有の「西高東低」の気圧配置、熱帯アジアの北東モンスーン、ヒマラヤ・チベット山塊とロッキー山脈のちがい、⑥寒い日本列島をもたらすチベット高原、チベット高原が造る偏西風の波動と日本の寒い冬、日本上空の気流は世界一速い、⑦アジアモンスーンが地球気候の変動に果たす役割、インドモンスーンとENSO、アジアモンスーンがENSOに影響している、ユーラシア大陸の積雪がアジアモンスーンに影響、

アジアモンスーンと日本の気候

①日本列島の季節変化と気候の年々変動を決めている要因、大陸東岸に位置し中緯度偏西風帯にある/アジアモンスーンの強い影響下にある/西熱帯太平洋の暖水域の影響を受けている/日本海によって大陸と隔てられた山岳地形の列島として存在、②春から夏への季節変化ー日射に対する大陸と海洋の感度差、シベリア高気圧の弱まりと太平洋高気圧の強まり、5月晴れののしくみー東南アジアモンスーンの開始、③梅雨入りと梅雨明けの機構、梅雨入りとインドモンスーンの開始、東日本に寒い夏をもたらす「やませ」しくみ、梅雨明けの機構⁻熱帯太平洋での対流活動の北へジャンプ、④季節内の天候のゆらぎー季節内変動、準2週間周期変動、数十日周期変動、⑤暑い習慣夏・涼しい夏のしくみ、熱帯太平洋での雲活動の影響ーPJパターン、インド洋での雲活動の影響ーインド洋ダイポール現象、偏西風の蛇行ーもう一つの天候のゆらぎ、⑥秋雨と台風の季節ー夏から秋へ、⑦時雨の季節⁻秋から冬への序奏、⑧冬の季節風と雪国、世界一の豪雪のしくみ、寒冬暖冬を左右する熱帯太平洋の雲活動、

気候と生物圏により創られてきたモンスーンアジア

①気候と生物圏は相互作用系、②アジアのグリーンベルト③気候・植生・水循環の密接な関係、気候と植生の関係、光合成は炭素循環と水循環を調整、シベリアの森林・凍土・気候の共生系、東南アジアのボルネオ島ー熱帯雨林と気候の共生系、雷と熱帯雨林、④森林はモンスーン気候を強化している、チベット高原と森林被覆の効果、植生による水の再循環、⑤アジアのグリーンベルトは生物多様性の宝庫、際立った種の多様性、氷床に覆われなかったグリーンベルト、氷期・間氷期サイクルにより消長するスンダランド、

モンスーンアジアの風土

①風土とは何か②風土論の系譜、和辻哲郎「風土」論、オギュスタン・ベルクの「風土」学、③モンスーンアジアの自然ー気候・地形・水循環・生態系、豊かなモンスーンアジア、活発な造山運動と沖積平野の形成、モンスーンに伴う活発な水資源と季節サイクル、「草木深し」の生態系、④水田稲作圏の形成、稲作の起源、水田稲作の持続可能性、水田稲作圏ーひとつの風土の形成、⑤モンスーンアジアの伝統的社会の形成と変容、多様性と多元性、中国ーひとつの水利社会、日本ー小農社会と勤勉革命、インドーモンスーンとカースト制、海域東南アジアーモンスーンを利用した交易の世界、大陸域東南アジアー小規模な自立的生業によるルースな稲作社会、

日本の風土と日本人の自然観の変遷

①多様で変化に富む日本列島の自然、夏・冬のモンスーンがもたらす多様な地域気候、日本列島の森林分布ー照葉樹林・ブナ林・針葉樹林、②先史時代の自然と文化、照葉樹林文化とブナ林文化ー日本列島の二つの基層、気候温暖期と縄文海進、火山大噴火による縄文文化の盛衰、水田稲作の開始ー弥生時代へ、スギ・ヒノキの拡大、森林破壊の進行と二次的自然の拡大、③古代から近世における風土の変遷、荘園の発展と二次的自然としての里山の形成、平安時代の社会・文化への季節変動の影響、「四季のイデオロギー」の形成ー文学に表れた中世的自然観、④近世における風土と文化の形成、文明としての江戸システム、「鎖国」ーひとつの循環型社会、⑤近世における自然観の変化ー俳諧・俳句の歴史から、「俳諧発句」の成立、変革者としての芭蕉、「おくのほそ道」ー現代日本人の原点、芭蕉とニュートンー東と西の自然観・宇宙観、⑥寒冷気候に苦しんだ江戸の経済・社会システム、小氷期、大地震と火山噴火、

モンスーンアジアの近代化とグローバル化

①モンスーンアジアの経済発展ー独自の風土にもとずく発展経路、モンスーンアジアはもともと「持続可能」な社会だった、「足るを知る」価値観の形成、②「近代化」した西欧との遭遇、イギリスの産業革命とモンスーンアジア、イギリス・中国・インドの三角貿易、植民地化によるインドの環境破壊、③日本の屈折した「近代化」、西欧の「近代科学・技術」に圧倒された明治維新、混乱する精神風土、「国体思想」を引きずった自然観ー「近代的」登山を例に、④モンスーンアジアのにおけるいくつかの「近代化」、西欧」とアジア的伝統の相克、インドー理想(普遍性)と現実(多様性)が交錯した「近代化」、タイー国王による「近代化」、中国ー毛周体制から「改革開放」経済へ、⑤モンスーンアジアの奇跡ー第二次世界大戦後、化石資源資本主義による世界市場の形成、石油エネルギーと「日本の奇跡」、オイル・トライアングルによる「東南アジアの奇跡」、エネルギー消費量から見たモンスーンアジア、

「人新世」を創り出したモンスーンアジア

①モンスーンアジアは地球環境問題のホットスポット、二酸化炭素増加のホットスポット、巨大都市が集中するモンスーンアジア、広域大気汚染と「日傘効果」、「水に流す」思想ーモンスーン自然観の負の側面か?②「地球温暖化」と「広域大気汚染」はアジアモンスーン気候にどう影響しているか?グローバルな影響とローカルな影響、インドモンスーンへの影響、東アジアモンスーンと梅雨前線への影響、今世紀末のアジアモンスーン降水量はどうなるのか?冬の日本の雪はどう変わるか、③水災害の増加と甚大化、地球温暖化は豪雨の頻度を高める、モンスーンアジアは水災害のホットスポット、④ヒマラヤ氷河群の縮小と氷河湖決壊、モンスーンの雪で涵養されるヒマラヤの氷河、氷河湖決壊洪水問題、⑤森林・凍土共生系の急激な変化は地球温暖化を加速する?

モンスーンアジアの未来可能性

①自然の恵みと自然災害共共存、大きな自然災害のリスク、3・11から学んだこと、②脱炭素社会の鍵を握るモンスーンアジア、化石資源資本主義経済からの脱却を、「世界の工場」としての経済システムの転換を、③気候変動下での水・エネルギー・食糧の安全保障を、東アジアの食料自給率の低さ、自然エネルギー社会への転換ーモンスーンアジアの高い可能性、モンスーンアジア全体での電力ネットワークの構築を、アジアのグリーンベルトと調和した経済への転換を、④モンスーンアジア共同体の提唱、人新世を超克するために、「アジアはひとつ」ーモンスーンアジア共同体の可能性、新しい「足るを知る」社会へ、

まとめ

①変化に富む日本の気候②地球の気候とその変動のしくみ③アジアモンスーンー地球気候における重要な役割④アジアモンスーンと日本の気候⑤気候と生物圏により創られてきたモンスーンアジア、⑥モンスーンアジアの風土⑦日本の風土と日本人の自然観の変遷⑧モンスーンアジアの近代化とグローバル化、⑨「人新世」を創り出したモンスーンアジア、⑩モンスーンアジアの未来可能性、前半はモンスーンの関心から「地球生命圏研究機構」を立ち上げ、研究成果を紹介、後半は和辻哲郎「風土」を読んで以来モンスーン地域における風土と社会についてまとめたものである、