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ファッション

皮革とブレンド 西村裕子 書評

本書はファッションやブランドと「倫理」がどう結びついているのかを解説したもの、著者は駒澤大学教授、ロンドン大学で社会人類学博士号取得、

「革づくり」職人と「革の道」ー卑賤なものからブランドへ

①革とギルド、卑賤とされた皮なめし人たち、近世日本の「ジャパン・ブランド」、ギルドから身をたてた西欧の皮なめし人たち、英国のブルジョワジー層をつくったレザーセラーズ、人口の増加と皮革需要は比例していた、歴史を重んじる英国人たち・ギルドが「制服ファッション」を制定した、ギルドは庶民の学校だった、ギルドを活用する偽政者たち、近代軍事産業と結びつく皮革、量産体制で失業する職人たち、職人ギルドと商人ギルドの対立、                                                                                        ②革とかかわったマイノリティ集団の人びと、イベリア半島のユダヤ人、モロッコのユダヤ系ユダヤ人集団、ユダヤ人に多かった革職人、アンダルーシアンというアイデンティティ、「革の道」をつくったユダヤ人商人たち、「革の道」を踏み固めてゆく水先案内人、蔑まれた皮なめし人、職人から工場経営者へ、アジアの皮なめし人集団・客家、南インドで革をつくるイスラム教徒たち、行き詰る日本の皮革製造業、

大量生産時代の光と影

①オートクチュールを可能にした量産体制、ブランドは手に入りやすい、「オートクチュール」という量産化を助けたメゾンのシステム、②多極化してゆくファッション産業基地、フランス経済をリードしたファッション産業、揺らぐパリ一極集中、イタリア経済の復興を助けたファッション産業、イタリアンファッションとサンタクローチェ、③大量生産時代が生む産業界の光と影、産業倫理と小規模皮革工場、移民労働者がつくる「メイド・イン・イタリー」、ブランドにマイナスイメージを与える労働者への搾取、産業倫理はサプライチェーン全体へ、

高級ブランドとポップカルチャーの相克

①革とポップカルチャー、革はアウトローの「征服」、クイア・コミュニティのシンボルとしての革、フレディ・マーキュリーがまとった「黒革」、②パンクとヒップホップが表象するメッセージ、「貧乏ルック」と社会的プロテクト、貧乏ルックの中に隠された「ぜいたくさ」、メインストリームに入り込むヒップホップ、ストリート・カルチャーからグローバル・カルチャーへ、③グローバルファッションブランドとヒップホップ、ジェネレーションXYZの登場、「挑発性」を取り込んで変貌してゆく高級ブランド、戦後の若者たちがつくった対抗文化、対抗文化に取り入れられたブラック・ミュージック、④変節したパンクの旗手たち、パンクと商業資本の複雑な関係、有名ブランドが取り込んだパンクの手法、⑤大量生産体制に隠された自由とは、ほんの少しの上等な革、「第二のルネサンス」とヴァージル・アブロー、ネットワークが造る21世紀の「平等性」、「編集」に加わることで人生を積極的に生きる、3%ルールー「ぜいたくさ」に隠された「自由」、

21世紀のファッションと揺れ動く「ファッション倫理」

①革と霊力、「アンチ毛皮組織」と「世界皮革会議」、子どもながらに恐怖したもの、毛皮の霊力と逆襲、動物を屠ることの衝撃、肉を浪費する人間社会へのプロテクト、屠られた動物の毛皮に宿る「スピリット」への信仰、②動物たちの逆襲、消費者運動の先駆けをつくったアンチ毛皮キャンペーン、動物の殺害を拒否する人々、世界を駆け巡った毛皮ビジネス、③ファッション倫理としてのフェアネスとブランディング、「フェアトレード」の認証は「倫理性」を掲げたブランディング、クロコダイルをめぐるバーキンとエルメスの闘争、「ぜいたく品」の指標とは何か、ぜいたく品は人とモノとの対話に支えられる、

日本の革はブランディングできるか

①日本の革づくりと職人性、見直される日本の「白なめし」技術、「なめし」とは何のことか、なめしの概念は文化によって異なる、白なめしの秘密、踏み込みに要する膨大な労働力、消滅していった日本の脳漿なめし、ネイティブ・アメリカンの「ふすべ技法」、日本の「ふすべ技法」、ジャパン・ブランドに憧れる人々、日本の革をブランド化できるか、江戸時代のファッションアイテムとなった雪駄、新たな産業変革へ対応を迫られる日本の皮革産業、②皮革産業とサステナビリティ、サステナビリティを掲げるスタール社、スタール社の成功と発展をもたらしたサステナビリティ、世界の懸案は「水」、製造インフラさえ変える高級ブランド、技術革新を支援する、③21世紀の魔術師としての化学者たち、医療知識を持つ皮田の人びと、環境に負担をかけない皮革づくりをめざして、「ピックスキン」として蘇った日本の「白革」、④革と「革」の関係、人工皮革の誕生、皮革は「人工皮革」と相補 的な関係にある、「ミドリ」の憂鬱、人工皮革は倫理的な「革」か、ヴィ―ガンレザーの登場、高級ブランドは革と「革」のブリコラ―ジュ、日本の皮革産業は破壊的、 技術についていけるか、

ポスト・コロナ禍時代のファッション倫理と革

①関係性という「魔力」、皮革がつくる「体験」はモノと人との関係づくり、ゲニウス・ロキ(場所の精霊)が示す人と土地との繋がり、皮革のアイデンティティを映し出すSNSと商品のタグ、天然皮革のメッセンジャーとして活躍するネモ船長、②サステイナビリティとブランディング、グロ ーバル化時代の地産地消とは、改めてファッション倫理とサステナビリティを問う、

まとめ

①「革づくり」職人と「革の道」②大量生産時代の光と影③高級ブランドとポップカルチャーの相克④21世紀のファッションと揺れ動く「ファッション倫理」⑤日本の革はブランディングできるか、⑥ポスト・コロナ禍時代のファッション倫理と革、皮革をめぐる倫理観の変遷を描いた、