新疆には数多くの民族が共存してきた、対する漢人はさほど多くなかった、新彊は数々の政変を経て中華人民共和国の支配下に入った、本書は新疆出身民族幹部の地位低下,漢人幹部の強権化に着目しながら中国の新疆統治の歴史を描いた、著者は東京大学大学院修士課程修了、法政大学准教授、
新疆あるいは東トルキスタンの二千年
①新疆という地域の成り立ち、オアシス都市の形成、漢と西域、唐と西域、ウイグ西遷とテュルク化の進行、東トルキスタンのイスラーム化、②清と新疆、ジューンガルと清、清の新疆統治、ムスリムの反乱、清の再征服、③中華民国と新疆、辛亥革命とロシア革命の波及、短命に終わった東トルキスタン・イスラーム共和国、盛世才統治下の新疆とソ連、東トルキスタンと共和国の興亡、
中国共産党による統治の始まり
①「解放」の名目と現実、「解放者」としての中国共産党、新彊省人民政府の成立、初期の党組織と少数民族エリートの誕生、共産党に対する抵抗運動、王震と習仲勲の対立、土地改革と党建設、②新疆ウイグル自治区と新疆生産建設兵団誕生、ソ連の存在、親ソ的な現地ムスリム、王震の怒りと恐れ、民族区域自治の模索、自治単位の入子構造、自治区名称の決定過程、新彊ウイグル自治区の誕生、新彊生産建設兵団の誕生、新彊の中国化とソ連、
中ソ対立の最前線として
①社会主義化と反右派闘争、商工業の集団化と国営化、農業の集団化、反右派闘争の波及、反右派闘争の過程とその結末、大躍進運動の展開と顚末、ソ連への逃亡と暴動の発生、調整政策への転換、②文化大革命の荒波に揉まれて、文化大革命と新疆、紅衛兵の到来と自治区指導者の保護、「奪権」と事実上の内乱状態、「大連合」の難航、王恩茂の失脚、幹部への批判とその罪状、新彊における中ソ国境紛争、林彪事件とセイフディンの昇進、少数民族党員・幹部の増加、少数民族言語工作の再開、文化大革命の終焉とセイフディンの解任、
「改革開放」の光と影
①文化大革命後の再出発、セイフディン解任後の政治混乱、名誉回復の推進、下放青年の問題、頻発するデモ・暴動・反革命武装暴乱、漢人幹部の転出論の浮上、鄧小平の新疆視察、王恩茂の第一書記返り咲き、民族区域自治法の制定、民族文化の再構築の始まり、「改革開放」の始動、②抗議行動のうねりと国際環境の激変、立ち上がる学生たち、学生運動の暗転、「改革開放」の進展、バレン郷事件、江沢民の新疆視察、ソ連解体の衝撃、大富豪ラビア・カーディル、宋漢良から王楽泉の時代へ、
抑圧と開発の同時進行
①グルジャ事件と9・11事件、96年7号文件、禁止されるささやかな娯楽・サッカー、グルジャ事件の顛末、取り締まりの強化と相次ぐ逮捕、ラビア・カーディルの失脚、江沢民の新疆視察と幹部の引き締め、兵団の領導の強化、「テロ」という概念の広まり、上海ファイブから上海協力機構へ、「テロとの戦い」の定式化、「三つの勢力」への対決姿勢、②西部大開発による矛盾の増幅、西部大開発の発動、先富論と資源収奪の認識、タリム川の水資源をめぐる矛盾、漢語中心の二言語教育の展開、内地への労働力の移転、2009年のウルムチ騒乱、政権側の対応と第一回中央新疆工作座談会、王楽泉時代から張春賢時代へ、
反テロ人民戦争へ
①習近平時代の始まり、柔軟化への期待、シルクロード経済ベルト、政府と民衆の認識のギャップ、習近平の新疆視察、②高まる「反テロ」の比重、第二回中央新疆工作座談会、反テロ人民戦争の展開、戦果と犠牲、反テロリズム法の制定、反テロリズム法実施弁法の制定、張春賢の離任、
大規模収容の衝撃
①親戚制度と職業訓練、陳全国の赴任と監視の強化、親戚制度、一体化プラットフォーム、「両面人」を処分せよ、消された教育官僚・知識人、新彊ウイグル自治区脱過激化条例の制定、訓練に参加する一般市民、職業訓練の諸相、職業訓練と脱貧民、②米中対立の焦点となる、収容の衝撃、「負のショーウインドウ」と化する、米中避難合戦の幕開け、強制労働をめぐる攻防、新彊への飛び火と中国側の反駁、強制的な産児制限を巡る攻防、ジェノサイド批判と中国の反撃、宣伝における中国の巻き返し、陳全国の離任、
新疆政策はジェノサイドなのか
ジェノサイドとは何か、日本における議論の広がり、20世紀の概念でくくれるか、文化的ジェノサイド、目的は民族の改造、中華民族として生きていくしかないのか、
まとめ
①新疆地域の2千年、②中国共産党統治③中ソ対立④改革開放の光と影、⑤抑圧と開発⑥反テロ人民戦争⑥大規模収容⑦新疆政策はジェノサイドとしてくくれない、解放から人権侵害に及んだ共産党統治と東トルキスタンの未来を考えたい、