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アニメと日本文化 田口章子編 書評

本書は京都芸術大学舞台芸術研究センターを拠点におこなっている「アニメと日本文化研究」成果を書籍化したもの、アニメを歌舞伎・人形操・妖怪・マンガ・浮世絵・物語から紐解き、日本のアニメが伝統的日本文化との関係なしには成立しなかったことを明らかにした執筆者-諏訪春雄/学習院大学名誉教授、田口章子/京都芸術大学教授、藤沢茜/神奈川大学准教授、森谷裕美子/京都芸術大学非常勤講師、

総論・日本文化としてのアニメ論ー諏訪春雄

アニメは日本そのもの、絵画は神の姿・祈願の表現・人の楽しみ、絵画表現に探る「洛中洛外図屏風」「𠮷原風俗図巻」「雪汀水禽図屏風」「八坂塔曼荼羅図絵」「遠近法」、型を重視する日本文化・形文化としてのアニメ①水木しげるの世界にみるアニメの型・ゲゲゲの鬼太郎、②千と千尋の神隠しにみるキャラクター、霊感論としてのアニメの主役は妖怪・異界と他界・幽霊・妖怪・日本の型と西欧のコラボレーション、多神教と一神教、

各論・アニメと歌舞伎・文楽⁻田口章子

日本アニメ文化史/鉄腕アトム、巨人の星、ゲゲゲの鬼太郎、サザエさん、ルパン三世、ドラえもん、ドラゴンボール、アンパンマン、ちびまる子ちゃん、太陽の王子 ホルスの大冒険、宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999、風の谷のナウシカ、となりのトトロ、もののけ姫、千と千尋の神隠し、

日本アニメの特質/①喜怒哀楽に代表される基本動作の強調・文楽人形の哀の型・歌舞伎の怒の型・②超越的存在である神仏と現世の人間の自在な交流・「本朝廿四考」「鑑獅子」「土蜘」「義経千本桜」の「四の切」、

伝統文化の深層/①日常と違う特殊な表現は神仏の身体動作から始まったことに由来②超越的存在である神仏と現世の人間の自在な交流は多神教的精神支えられているため、

近世演劇と漫画ー森谷裕美子

絵入浄瑠璃本・絵入狂言本・絵尽しと漫画、①コマ割りについてー絵入浄瑠璃本・絵入狂言本、「曽我扇八景」「けいせい富士見る里」「出世景清」「とうだいき」「三世演禽法起」②コマ割りと歌舞伎、浄瑠璃絵尽し「扇矢数四十七本」、

耳鳥斎「絵本水や空」について①「絵本水や空」の刊行は天明元年1781から天明2年正月まで、②題名の「水や空」とは古歌をもとにした言葉でまことか、かりか見分けつかない、③「絵本水や空」と「翆釜亭戯画譜」「旦生言語備」の役者の似顔絵、上巻と中巻は上方の役者で「翆釜亭戯画譜」や「旦生言語備」と共通する役者多い、下巻の江戸の役者は「役者舞台扇」に見られる人物多い、④「絵本水や空」と役者評判記、上巻は中村富十郎、芳澤伊呂波、中村次郎、中巻は澤村國太郎、嵐三五郎、⑤先行作としての鳥羽絵は上方で流行した戯画の一様式、「鳥羽絵筆拍子」の歌舞伎の扱い・「桜曽我」「浮世曽我」「国姓爺合戦」辻惟雄は鳥羽絵の笑いは漫画の原点と述べる、

岡本一平「新水や空」俳優の部について、①「新水や空」に描かれた役者・俳優一覧、②耳鳥斎「絵本水や空」と岡本一平、耳鳥斎を幕府時代の漫画家と称した、耳鳥斎に触発されて「役者生命摘出」作品、③「新水や空」の評判、描かれた役者とブロマイド・写真、ロンドン滞在時異常なセンセイション・「新水や空」と役者の写真比較で似ているもの/市川猿之助・大谷友右衛門・中村吉右衛門・澤村源之助・実川延若・尾上菊五郎

浮世絵・近世小説に見るアニメーション的手法ー藤澤茜

江戸時代のアニメーションの原点は写し絵「流行浮世の写し絵」

浮世絵に見るアニメーション的手法①アニメーション手法②浮世絵における異時同図法「玉藻前御前公服」「大江山酒吞童子」「椿説弓張月」「舌切り雀」③貼交絵とコマの動き、コマ絵は「絵兄弟」「絵兄弟みちびき廿四季」「絵兄弟やさすがた」、貼交絵は「東海道張交図会」鑑賞者が宿場の順にコマをたどる、

絵双六のコマ割り①江戸時代の絵双六「廻り双六」②道中双六と旅の疑似体験「東海道名所入新版道中双六」「参宮上京道中一覧双六」③絵双六におけるマスの配置と遊び方工夫「鎌倉 江ノ島 大山 新板往来双六」「江戸名所花見双六」

江戸時代の小説挿絵における連続性、①漫画の元祖「黄表紙」②読本「新累解脱物語」の挿絵ー自在に動く幽霊、読本は「雨月物語」「春雨物語」「椿説弓張月」「南総里見八犬伝」、挿絵の効果「新累解脱物語」③読本「霜夜星」お岩の挿絵⁻めくることで味わう場面の連続性

アニメにみる女神信仰ー田口章子

先行研究とは違う視点、①従来説共通点、女性は男性のサポート役②「女性の霊性」という視点、日本は女性霊性が守ってきた国、

伝統的な男女観、①ヒメヒコ制・女性と男性が力を合わせて国を治める②男尊女卑ではない男女観・歌舞伎の通称「お初徳兵衛」「おかる勘平」「お染久松」「お半長右衛門」、女主人公に共通するのは、男性の救済者で庇護者・女性の犠牲死によって物事を解決・復活と再生をうながす、

アニメに描かれる男女観、①男主人公が活躍「天空の城ラピュタ」、冒険活劇、物語を支えるシータ、パズーの夢を実現するシータ、シータの使命、日本の男女観の原型、②女主人公が活躍「風の谷のナウシカ」、女主人公ナウシカの役割ー救済者で犠牲者、ナウシカを支える男たち、女神としての存在、

まとめ

日本文化としてのアニメ、絵画と型、アニメと歌舞伎・文楽、絵入本と二つの「水や空」・耳鳥斎と岡本一平、浮世絵と近世小説挿絵に見るアニメション的手法・絵双六コマ割りと小説挿絵の連続性、アニメに見る女神信仰をもってアニメの深層文化を研究したもの、