本書は学校教育における深刻な行き詰まりを念頭に、戦後教育の展開とどのような問題を抱えるに至ったのかを描いている、著者は東京大学大学院博士課程単位取得、東京大学大学院教授、教育史・教育学専攻
敗戦後の学校改革
文部省の思考の連続性とアメリカ主導への抵抗、6・3制は戦前の悲願、嫌われた男女共学
混乱の子供たち
教育を受ける権利と激増する孤児・浮浪児・身売り・広島長崎の子供たち
教育の55年体制ー文部省対日教組
教員の組合運動、政治運動規制と勤務評定闘争、政治に目覚める子供たち・生徒会、
財界の要求を反映する学校教育
産業重視の教育ー学校に理科実験室、均質な労働力の要求ー1958年学習指導要領改訂・学力テストと障害児の隔離、
高度経済成長下、悲鳴を上げる子供たち
一億総中流の不幸・欲求不満の固まり、進学率の急上昇と教師の堕落、増加する逸脱行動ー学校恐怖症と非行、
1970年前後の抵抗運動ー教育の可能性・学園闘争と共生教育思想
学習権を主張する子供たち・教科書検定訴訟と学園闘争、養護学校義務化反対闘争・包摂と排除、広がる共生教育思想ー能率重視への懐疑、
ウンコまで管理する時代・構造転換と歪み
減量経営と職場内いじめ、管理教育の進行ー中教審答申「第三の教育改革」・教員管理・校則・体罰、校内暴力・いじめ続発・自殺、
政治主導の教育ー新自由主義改革への道・目標達成・人材育成・民間市場創設
臨時教育審議会の提起・官邸の下請役割・官邸の人脈重視・疑問視される改革案、公教育のスリム化・個性重視・生涯学習、子供の権利条約の批准と法律なき骨抜き、
教師たちの苦悩ー新自由主義改革の本格化
学級崩壊の頻発ーイライラする子供たち・無秩序の教室と解体される戦後家族、教育の規制緩和ー週五日制から民営化構想まで・日教組と文部省の歴史的和解・義務教育費国庫負担の総額裁量制と非正規雇用教員の増加・週5日制の導入と教育の機会の格差拡大・国家への忠誠と精神疾患、
改革は子供たちに何をもたらしたか
教育基本法の改正と子供の規範強化・行政の役割強化と家庭教育像、全国学テの導入ー競争過熱と弱者排除、規範重視ーゼロトレランス方式導入・少年法改正と子供の監視・家庭教育介入
道徳の教科化・教科書検定統制強化ー子供のなかから逸脱者をあぶりだす
特別支援教育の理念と現実
発達障害の急増ー特別支援学校在籍者の激増と発達障害の過剰医療化・脳機能障害として排除された子供への薬害、日本のインクルーシブ教育ー深刻化する排除・障碍者権利条約批准似て非なる国連のインクルーシブ教育との違い、見逃される薬害・ニューカマーの子供は発達障害と判断されやすい・社会的弱者排除の教育体制・大阪市立小学校の学習権の保証と弱者の学習権尊重
学校再生の分かれ道
①society5.0-サイバー空間と現実空間を融合させた未来社会像・AIの進展による未来の教室・子供の個別管理と逸脱者の排除
②子供基本法の発効ー全ての子供・国連で子供の権利条約採択から30年経過・学校再生の可能性
まとめ
人権の考えで国連の教育観とAI重視の政府の教育観に隔たりがある、戦後政府の弱者排除によるAI化は大きな問題を抱えるに至った